自己破産は職場に知られる?会社に伝わる経路と、退職金の書類のこと

ご相談者様の中には、職場に自己破産のことを知られたくないという一点で、何年も返済を続けてしまっていた、という方がいらっしゃいます。ご家族にも話せず、同僚にはなおさら知られたくない、職を失うかもしれない。そういったお気持ちが重なって、お問い合わせそのものができなくなってしまっていた、というお話も伺います。
自己破産が職場に伝わる経路は限られておりますので、まずはそこを整理してお伝えします。そのうえで、職種や状況によって注意が必要になる部分についても、正直にお話しします。
なお、借金・債務整理のご相談は、東京23区にお住まいの方、または東京23区にお勤めの方を対象とさせていただいております。
職場に伝わりうる経路は、3つです
自己破産の情報が職場に届く経路は、官報、信用情報機関、それから手続上の書類の3つになります。このうち実務で問題になりますのは、ほとんどが3つ目の書類関係です。
自己破産は法律に基づいた公的な手続ですので、その性格上、一定の情報が外部に出ることは避けられません。ただ、外部に出るということと、職場に届くということは、別の話になります。
経路1:官報への掲載
破産手続開始の決定が出ますと、破産者の氏名と住所が官報に掲載されます。掲載は開始決定時と免責決定時の2回で、これは法律上の義務ですので、避けることはできません。
もっとも、一般の企業が日常的に官報を確認している、ということはまずありません。この点は後ほど詳しくお話しします。
経路2:信用情報機関への登録
自己破産をしますと、JICC・CIC・全国銀行個人信用情報センターといった信用情報機関に、事故情報が登録されます。
この情報は、金融機関やカード会社が審査の際に照会するものです。ただ、信用情報の取扱いは法律で細かく定められているものではなく、各機関の運用によるところが大きいため、確実にこうであると申し上げられることは多くありません。そのうえで申し上げますと、一般の雇用主が採用や人事のために信用情報を照会するという運用は、通常ございません。
経路3:手続上の書類
実務で最も注意が必要なのが、この経路です。
自己破産の申立てにあたりましては、退職金の見込額を確認する必要がございます。東京地方裁判所では、退職金の支給見込額の8分の1が破産財団に組み入れられる運用となっているためです。
また、勤務先に対して未払いの給与などの債権がある場合や、逆に勤務先から借入れをしている場合には、その会社が債権者として手続に関与してくることになります。
退職金の書類は、ご心配になるほど会社に頼まずに済むことが多いです
この点をご不安に思われる方が非常に多いのですが、実際に会社へ証明書の発行をお願いすることになった方は、それほど多くありません。
これまでお受けしてきた印象としましては、雇用条件通知書や雇用契約書に、退職金が発生しない旨が明記されているケースが多いです。その場合は、その書類をお出しいただければ足ります。
退職金の制度がある場合であっても、会社のパソコンからマイページなどで見込額を出力できる方が多いという印象です。また、社内の賃金規定と給与明細を組み合わせて、ご自身で計算できた方もいらっしゃいました。
そういったもので対応できない場合に、はじめて勤務先に、退職した場合の退職金額を証明する書面の発行を依頼することになります。
就業規則や退職金規程につきましては、常時10人以上の労働者がいる事業場では労働基準監督署への届出義務がありますので、社内での掲示や閲覧請求によって入手できることも少なくありません。どの書類で対応できるかは、ご相談の段階で一緒に確認いたしますので、会社への接触は最小限に抑えられます。
官報を職場が確認する可能性について
官報は毎日発行されており、法律や政令の公布、会社の公告、裁判所の破産公告などが掲載されています。現在は「官報情報検索サービス」としてオンラインでの検索も可能です。
官報を定期的に確認しているのは、主に与信管理を業務とする金融機関や信販会社、一部の大手企業の法務部門などになります。社員の与信管理を行わない一般的な事業所が官報を確認する機会は、ほとんどないといえます。
掲載されること自体を防ぐ方法はございませんが、過度にご心配いただく必要はないかと思います。官報への掲載の内容や時期につきましては、自己破産と官報についての解説記事もあわせてご覧ください。
職種によっては、就けない期間があります
自己破産をしますと、復権するまでの間、一定の職業や資格に就くことができなくなります。この資格制限は破産法の規定ではなく、それぞれの職業の個別法における欠格事由として定められているものです。
| 職業・資格 | 影響 | 制限期間 |
|---|---|---|
| 弁護士・司法書士・公認会計士などの士業 | 業務を行えません | 免責確定まで |
| 保険の外交員・宅地建物取引業者 | 業務を行えません | 免責確定まで |
| 警備員 | 就業できません | 免責確定まで |
| 会社の取締役 | いったん退任することになります | 免責確定まで(その後に改めて選任) |
| 一般の会社員・公務員 | 原則として資格制限はありません | — |
根拠となる条文は、弁護士法7条、警備業法3条、保険業法、宅地建物取引業法などにそれぞれ置かれております。復権につきましては破産法255条に定めがあります。
一般の会社員や公務員につきましては、自己破産を理由とした解雇は認められません。
なお、金融機関にお勤めの方の場合、内部規程や就業規則で破産を届け出る義務が定められていることがあります。手続に入る前に、就業規則を確認しておかれると安心です。
資格制限のある職種の方は、お辞めになる前にご相談ください
資格の制限がかかる職種にお勤めの方から、実際にご依頼をいただいたことがございます。
そういった方々に共通しておりますのが、ご自分で調べて制限のことを知り、仕事を辞めてからご相談にお越しになるという点です。制度としてはそのとおりなのですが、収入が途絶えた状態でご相談にいらっしゃることになりますので、正直なところ、もったいないと感じることが少なくありません。
申立ての時期は、ある程度調整することができます。お辞めになる前にご相談いただければ、いつ申し立てるのが無理のない形になるか、順番からご提案できます。
転職を予定されている場合につきましては、自己破産をすると転職先に知られる?調べられる手段と、就けない職種にも記載しておりますので、あわせてご覧ください。
会社から借入れがある場合
社内貸付や従業員貸付の制度をご利用になっている場合、その会社は債権者になります。破産手続ではすべての債権者に通知が届きますので、この場合は職場に知られることを前提に進め方を検討することになります。
社内貸付だけを先に返済してから手続に入る、という方向を考えたくなるところですが、特定の債権者にだけ返済することは偏頗弁済として問題になる場合がございます。どのタイミングでどの債務を返済するかは、ご自身で判断される前に一度お話を伺えればと思います。
よくあるご質問
職場に知られたくないというお気持ちは、ご相談にお越しになる方のほとんどが持っていらっしゃいます。
実際に問題になりますのは、官報でも信用情報でもなく、退職金の書類と、会社からの借入れの2点にほぼ絞られます。そしてそのどちらも、事前に状況が分かっていれば、進め方を組み立てることができます。
何年も抱えたままにされる前に、まずは一度お話をお聞かせください。
なお、借金・債務整理のご相談は、弁護士会の規程により対面での面談が必要となります。そのため、東京23区にお住まいの方、または東京23区にお勤めの方を対象とさせていただいております。初回のご相談は無料です。









