法テラスを利用した自己破産の費用・条件・流れを弁護士が解説

「自己破産したいけど、そもそも破産を依頼するための弁護士費用が用意できない」——そういった相談を、区役所や弁護士会の法律相談でも多くいただきます。

結論からお伝えすると、お金がないからこそ使える制度が、法テラス(日本司法支援センター)になります。

法テラスを利用することで、通常40万〜60万円ほどかかることが想定される弁護士費用を大幅に抑えることができ、さらに無利息での分割払いも可能になります。

さらに、生活保護を受給されている方の場合は、費用が実質ゼロになるケースもあります。

ただし、法テラスには独自の審査があり、手続きの流れも通常の依頼とは異なります。ここでは、法テラスを使った自己破産の全体像を、費用・審査・流れ・注意点に触れつつ解説します。

目次

法テラスとは何か

法テラスは、総合法律支援法(平成16年法律第74号)に基づき、2006年4月に設立された準公的機関です。正式名称は「日本司法支援センター」といい、「お金がないから弁護士に相談できない」という状況をなくすことを目的に設立されました。

中核的なサービスは「民事法律扶助」と呼ばれ、主に以下の2つがあります。

  • 無料法律相談:同一の問題について、3回まで無料で弁護士に相談できます。
  • 弁護士費用の立替え(代理援助):審査を通過した場合、弁護士費用を法テラスが立て替え、依頼者は後から無利息で分割返済します。

よく「法テラスを使うと弁護士を選べない」という誤解がありますが、それは正確ではありません。先に弁護士に相談し、その弁護士が法テラスに対応しているかを確認してから申し込む、という流れでも全く問題ありません。

現に、当職の場合、自己破産のご相談者様で、法テラスの基準に該当すると思われる方には、法テラスの利用を積極的におすすめしており、そのまま法テラスを利用してご依頼いただいております。

法テラスを使った自己破産の費用

まず、費用の全体像を把握しておきましょう。法テラスを利用した場合と、一般的な法律事務所に直接依頼した場合の比較です。

項目法テラス利用時(同時廃止・債権者10社以下)一般的な事務所への直接依頼
着手金約132,000円200,000円〜400,000円
実費約23,000円20,000円〜50,000円
報酬金0円(原則発生しない※)別途発生する場合あり
合計目安155,000円〜210,000円440,000円〜660,000円
返済方法月々5,000〜10,000円・無利息の分割払い事務所ごとに異なる

※債権者数や、同時廃止か管財事件か等によって、費用が異なりますので、必ずしも表のとおりになるわけではありません。
※過払い金が回収できた場合などは別途報酬金が発生することがあります。

なお、立替金の返済は「援助開始決定後」から始まります。手続きが終わるまで一切返済しなくていい、というわけではない点は注意が必要です。

管財事件の場合は別途費用が必要

上記の費用は「同時廃止事件」(財産がほとんどなく、浪費等の注意すべき点もない場合)を前提としています。

一定以上の財産がある場合や、ギャンブル・浪費が原因の場合などは「管財事件」となり、裁判所に「予納金」として別途費用を納める必要があります。

予納金は事案によって幅がありますが、個人の方で、一般的な事案では、最低額である20万円が設定されることが多いです。

ただし、一般の利用者の場合、法テラスはこの予納金までは立て替えないことに注意が必要です。
弁護士費用は分割払いにできても、予納金は自分で用意しなければならない点は、事前に把握しておく必要があります。

なお、生活保護受給者の場合は、この予納金(最大20万円まで)も法テラスが立て替える制度があります。詳しくは後述します。

法テラスを利用できる条件(審査の内容)

法テラスの代理援助(費用の立替え)を利用するには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。

①収入基準

申込者と配偶者の手取り月収の合計が、以下の基準以下であることが必要です。東京都特別区・大阪市などの大都市圏では、基準額が約10%引き上げられています。

世帯人数原則的な手取り月収基準大都市圏(東京都特別区・大阪市等)の基準
1人182,000円以下200,200円以下
2人251,000円以下276,100円以下
3人272,000円以下299,200円以下
4人299,000円以下328,900円以下
5人以上1人増ごとに30,000円加算1人増ごとに33,000円加算

この金額はあくまで「枠」であり、医療費・教育費など不可避的な支出は一定範囲内で収入から控除されます。また、家賃や住宅ローンの支払いがある場合は、一定の限度額の範囲内で基準額に加算できます(東京都特別区の場合、1人世帯は53,000円まで加算可能など)。収入が基準をわずかに超えていても、家賃が高い・医療費がかかるという事情があれば、利用できる場合があります。

②資産基準

現金・預貯金・有価証券・不動産・自動車などの資産合計が、以下の基準以下であることが必要です。

世帯構成資産合計額の基準
単身世帯180万円以下
2人世帯250万円以下
3人世帯270万円以下
4人世帯300万円以下

③免責の見込みがないとはいえないこと

「免責(借金の免除)が絶望的でないこと」も要件の一つです。ギャンブルや浪費が原因の場合でも、反省の姿勢や今後の生活再建への意志が伝わる場合は、免責の見込みありと判断されることが多くあります。

法テラスを使った自己破産の流れ

全体の流れ(概要)

ステップ内容期間の目安
①相談契約事務所などで無料相談即日〜数日
②受任・申込み相談者にて必要書類準備後、弁護士から法テラスへ援助申込み書類を提出必要書類準備後すぐ
③法テラスの審査収入・資産・免責見込みの審査2週間~1ヶ月程度
④援助決定・契約・返済開始法テラスから契約書が送付され、相談者・弁護士が署名捺印することで三者契約(依頼者・弁護士・法テラス)が成立。後日立替金の返済も開始
⑤受任通知の発送弁護士が債権者へ受任通知を送付。この時点から督促がストップ受任通知はすぐ。督促ストップは、相手が受任通知を受領次第
⑥書類収集・申立て準備必要書類を収集し、裁判所への申立書を作成3ヶ月前後
⑦裁判所への申立て弁護士が裁判所に自己破産の申立てを行う準備完了後
⑧免責許可決定裁判所が免責を許可。借金が免除される申立てから2〜4ヶ月(同時廃止の場合)

①まず相談する

法テラスの窓口に直接行く方法と、法テラスと契約している法律事務所に直接相談する「持ち込み方式」の2つがあります。実務上は、法テラスに対応している法律事務所に直接相談する方が、手続きがスムーズに進む場合が多いです。弁護士が法テラスへの申込みを主導してくれるため、依頼者の事務的な負担が少なくなります。当然ながら、当職の方では、法テラスを利用した自己破産のご相談・ご依頼が可能です。

②〜④法テラスの審査(通常2週間~1ヶ月程度)

弁護士が受任の意向を示したのち、法テラスへ援助申込み書類を提出します。法テラスによる審査は、通常2週間~1ヶ月程度かかります(書類の不備・繁忙期はさらに延びることがあります)。

審査が通り援助が決定すると、法テラスから弁護士宛てに契約書が送付されます。これに依頼者・弁護士が署名捺印し次第、法テラスとの三者契約が成立します。立替金の返済はこの援助開始決定後から始まります(月5,000〜10,000円程度・無利息)。

⑤受任通知の発送——タイミングについて

個人の方の破産の場合、受任通知(債権者への取り立て停止通知)の発送タイミングは、原則、契約成立後すぐになります。法テラスの審査期間中に取り立てが続く場合は、「弁護士に相談済みである」「法テラス待ちの状況である」などと伝えると良いかと思います。精神的に追い詰められている方は、相談時に「督促を早く止めてほしい」と率直に伝えていただくことが重要です。

⑥〜⑧書類収集・申立て・免責まで

審査が通ったら、自己破産の申立てに必要な書類を収集します。弁護士が案内しながら進めますので、ひとつひとつ対応していただければ大丈夫です。

申立てから免責許可決定まで、概ね2〜4か月程度が目安です。

必要書類——法テラスの利用のために何を用意すればよいか

法テラスへの申込み審査には、多くの書類が必要になります。不備があると審査が止まったりすることもありますが、その場合も追完すれば大丈夫ということが多いですので、慌てずに準備しましょう。

必要書類

  • 世帯全員の住民票(申込みから3ヶ月以内発行、マイナンバーのみ省略、その他は一切省略されていないもの)
  • 法テラス所定の「資力申告書」+収入が分かるもの
    • 例)給与明細(直近2ヶ月分)、源泉徴収票(直近1年分)または市区町村発行の所得・課税証明書、生活保護受給証明書(生活保護受給者の場合)、確定申告書、解雇通知、年金受給証明書など
    • 生活状況によってご準備いただく資料が異なりますので、詳しくはご相談時にお問い合わせください。
  • 法テラス所定の口座登録用紙+当該口座の通帳またはキャッシュカードのコピー

詳しくは、法テラスのウェブサイトにてご確認いただけます。

生活保護受給者の場合——費用が実質ゼロになる可能性があります

生活保護を受給している方が自己破産を行う場合、法テラスの制度は大きく異なります。

比較項目一般の利用者生活保護受給者
弁護士費用の立替えありあり
毎月の返済(償還)月5,000〜10,000円(無利息)受給中は猶予。事件終了後も受給継続中なら免除申請が可能
官報公告費(予納金)自己負担立替あり(免除申請が可能)
管財人費用(予納金)自己負担(最低20万円程度〜)立替あり(免除申請が可能)

費用免除の仕組み

事件が終結した時点で引き続き生活保護を受給している場合、法テラスへの立替金の返済義務について「免除申請」を行うことができます。免除申請が認められると、弁護士費用・実費・予納金(管財費用含む)について、実質的な自己負担ゼロで自己破産を行うことができます。

ただし、免除は自動的に認められるものではなく、申請が必要です。また、申請すれば必ず免除されるというものでもありません。必要書類として、「償還免除申請書」と、申請日から3ヶ月以内に発行された「生活保護受給証明書」を法テラスに提出します。申込時には生活保護受給者であっても、この免除の書類を出し忘れてしまった場合や、手続き中に生活保護受給者ではなくなった場合などは、費用負担が発生しますので、ご注意ください。

生活保護を受給しながら多重債務を抱えている方は、諦めずにぜひ一度ご相談ください。費用の心配なく手続きを進める可能性について、一緒に確認します。

注意点

前回法テラスを利用した際の立替金が未払いの場合、新たな援助申込みは原則として受理されないようです。過去の未払分を解消することが、再度の援助申込みの前提条件となるようですので、ご注意ください。

よくある質問

Q. 収入が基準をわずかに超えているのですが、法テラスは絶対に利用できませんか?

収入基準は、家賃・医療費・教育費などの不可避的な支出を考慮して加算・控除できる仕組みがあります。基準をわずかに超えているからといって諦める必要はなく、個別に確認することが重要です。

Q. 自営業者でも法テラスを使えますか?

自営業者でも、資産基準を満たしていれば利用可能です。ただし、自営業者の方は原則として管財事件になりますので、予納金の自己負担が発生することに注意が必要です。

Q. 法テラスを使うと、手続きに時間がかかりますか?

法テラスの審査期間(通常2週間~1ヶ月程度)が加わるため、一般の事務所への直接依頼と比べると、スタートまでに時間がかかることがあります。ただし、審査通過後の流れは通常の手続きと大きくは変わりません。

まとめ

法テラスを使った自己破産は、費用の大幅な軽減と無利息の分割払いが可能であるため、「お金がないから弁護士に頼めない」という状況を解決するための有力な手段です。特に、生活保護受給者の方については、費用が実質ゼロになる可能性もありますので、使わない手はないといえるでしょう。

一方で、審査に時間がかかる点や、管財事件における予納金の自己負担(生活保護受給者以外の場合)など、利用前に知っておくべき注意点もあります。

「自分が法テラスを使えるかどうかわからない」という方も、まずは弁護士に現在の状況をお伝えください。収入や資産の状況をお聞きした上で、法テラスが使えるかどうかも含めて、最適な方針をご提案します。


ご相談をお考えの方へ

現在、

  • 東京在住の方
  • 勤務先が東京23区内の方

のいずれかで、弊所、または弁護士会(霞が関)へお越しいただくことが可能な方の債務整理に関するご相談を随時受け付けております。

  • 法テラスを使って自己破産したいが、自分が対象になるか知りたい
  • 生活保護を受給中で、費用の負担なく破産できるか確認したい
  • 他の事務所で法テラスに対応していないと言われた
  • 過去に法テラスを使って破産したが、また借金が増えてしまった
  • 管財事件になる可能性があり、費用の見通しを知りたい

など、どのような状況でも、まずはお気軽にご相談ください。

初回相談は無料です。法テラスのご利用も可能です。なお、借金・債務整理のご相談は、規程上、対面でのご相談が必要です。

お問い合わせ・ご相談はこちら

03-6206-6168

受付時間: 平日 10:00~19:00

メールフォームでのお問い合わせ

この記事を書いた人

弁護士/心理カウンセラー/夫婦カウンセラー

法律と心、両方の視点から問題に向き合い、「本当に納得できる解決」を大切にしています。
男女問題・借金問題・交通事故など、心の負担が大きいトラブルや人間関係のお悩みに強みがあります。法律実務歴10年以上。安心してご相談ください。

目次