婚約指輪を返せと言われた─離婚・婚約破棄の返還義務を弁護士解説

「婚約破棄になったら、婚約指輪は返さないといけないの?」
「不倫されて婚約破棄したのに、婚約指輪を返してくれない。法的に取り返せる?」
婚約指輪をめぐるトラブルは、婚約破棄という感情的に辛い出来事と重なるため、冷静に判断しにくい状況で起きることがほとんどです。「返せと言われた側」「返してほしい側」、どちらの立場からも多くのご相談をいただきます。
この記事では、 男女問題を中心に受任実績1,000件以上の弁護士が、婚約指輪の返還義務をケース別に整理し、それぞれの対処法を具体的に解説します。
まず結論:返す必要があるかどうかは「誰が・なぜ婚約を破棄したか」で変わります
婚約指輪は、交際中の一般的なプレゼントとは法的に異なる扱いを受けます。「婚姻することを前提とした特別な贈与」と解される場合があり、婚約が破棄された場合、その前提が崩れたとして返還が問題になりやすいのです。
ただし、「婚約が破棄されたから必ず返す必要がある」わけではありません。誰の責任で婚約が破棄になったのかによって、結論が大きく変わります。
| 婚約破棄のケース | 返還義務 | 補足 |
|---|---|---|
| 相手の不貞(浮気)が原因 | 返さなくてよい | 慰謝料請求も可能な場合あり |
| 相手からの一方的な破棄 | 返さなくてよい | 婚約破棄の慰謝料請求も検討を |
| 自分からの一方的な破棄 | 返還義務が生じやすい | 慰謝料請求される可能性もある |
| 自分の不貞(浮気)が原因 | 返還義務が生じやすい | 慰謝料請求される可能性もある |
| 双方の合意による解消 | 交渉・事情次第 | 返還を求められることもある |
婚約指輪の法的性質:なぜ交際中のプレゼントと違うのか
交際中の一般的なプレゼントは贈与契約として成立しており、別れたからといって返す義務は生じません。では、なぜ婚約指輪は扱いが異なるのでしょうか。
婚約指輪は、「婚約が破棄されることを解除条件とした贈与(解除条件付贈与)」と解される場合があります。民法127条2項は、解除条件付法律行為は解除条件が成就した時(=婚約が破棄された時)からその効力を失うと定めています。婚約指輪の贈与をこのように解した場合、婚約破棄という解除条件が成就することにより贈与の効力が失われ、返還が認められるケースがあるのです。
また、返還義務が認められた場合の法的根拠として「不当利得」(民法703条)が挙げられることもあります。法律上の原因なく他人の財産を保有することになるため、返還しなければならないという考え方です。
ただし、すべての婚約破棄で自動的に返還義務が発生するわけではなく、破棄の原因・経緯・双方の責任の程度が重要な判断材料になります。
「返せと言われた側」の方へ|対処法
婚約破棄後に相手から婚約指輪の返還を求められた場合、まず冷静に「どのケースに当たるか」を確認することが重要です。
相手の責任で破棄になった場合は返す必要はありません
相手の不貞や一方的な破棄が原因であれば、返還を拒否する正当な理由があります。「返さなければ訴える」と言われても、法的根拠がない請求には応じる必要はありません。毅然とした態度で断ったうえで、必要であれば弁護士に代理人を依頼することも選択肢です。
自分に責任がある場合は慎重に判断を
自分の不貞や一方的な破棄が原因の場合は、返還義務が認められる可能性が高くなります。ただし、返還するかどうか・交渉する余地があるかどうかは個別の事情によって異なります。動く前に弁護士に相談し、対応方針を確認されることをおすすめします。
双方合意の解消の場合は交渉の余地があります
どちらかに一方的な責任があるわけではない場合は、返還するかどうかを当事者間で交渉することになります。話し合いがまとまらない場合は、弁護士を通じた示談交渉や、調停・訴訟という手段もあります。
カウンセラー視点:感情的なやりとりには注意を
婚約破棄という出来事の直後は、相手も感情的になっていることが多く、LINEや電話でのやりとりが激しくなりがちです。「返さないなら晒す」「職場に言う」といった脅し文句が出てくることもあります。
こうした発言はスクリーンショットで記録を残しておきましょう。脅迫・強要にあたる可能性があり、後の法的対処で重要な証拠になります。感情的な相手との直接交渉は避け、弁護士に間に入ってもらうことで、冷静に問題を解決しやすくなります。
「返してほしい側」の方へ|法的に取り返す方法
婚約指輪を返してほしいのに相手が応じない場合、法的手段を検討することができます。
まず内容証明郵便で返還請求する
口頭やLINEでの請求は記録が曖昧になりがちです。弁護士に依頼して内容証明郵便で返還請求を行うことで、「いつ・何を・どのような根拠で請求したか」を記録として残すことができます。相手に対して法的な本気度を示す効果もあります。
話し合いで解決しない場合は調停・訴訟へ
内容証明を送っても相手が返還に応じない場合は、民事調停や少額訴訟(60万円以下の場合)、通常訴訟といった法的手続きを検討することになります。婚約指輪の返還請求は、不当利得返還請求や損害賠償請求として構成することが多いとされています。
慰謝料請求と合わせて検討する
相手の不貞や一方的な婚約破棄が原因の場合は、婚約指輪の返還請求だけでなく、婚約破棄に伴う慰謝料請求も同時に検討できます。婚約は法律上も保護される関係であり、正当な理由のない婚約破棄は損害賠償の対象になりえます。弁護士に相談のうえ、請求の全体像を整理されることをおすすめします。
よくある質問
Q. 相手から一方的に婚約を破棄されました。婚約指輪は返さなくてもいいですか?
A. 相手からの一方的な破棄が原因であれば、返還を拒否できる可能性が高いと思われます。さらに、婚約破棄に伴う慰謝料を請求できる場合もあります。まずは弁護士に状況をご相談ください。
Q. 自分から婚約破棄を申し出ました。婚約指輪は返さなければなりませんか?
A. 自分からの一方的な破棄の場合、返還義務が認められる可能性があります。ただし、破棄に至った経緯や双方の責任の程度によって結論が変わることもあります。動く前に弁護士に相談のうえ、対応方針を確認されることをおすすめします。
Q. 相手の浮気が原因で婚約破棄しましたが、相手が指輪を返してくれません。どうすればいいですか?
A. 相手の不貞が原因であれば、婚約指輪の返還請求に加え、慰謝料請求も検討できます。相手が任意に応じない場合は、内容証明郵便による請求や法的手続きを通じて回収を求めることが可能な場合があります。弁護士にご相談ください。
Q. 婚約指輪の価格が高額です。返還を求めるなら裁判が必要ですか?
A. 必ずしも裁判が必要というわけではありません。弁護士を通じた示談交渉で解決するケースも多くあります。60万円以下の場合は少額訴訟という簡易な手続きもありますが、高額な指輪の場合は通常訴訟になることが多いとされています。まずは弁護士にご相談のうえ、方針を検討されることをおすすめします。
Q. 婚約指輪以外に渡した結婚準備のお金も返してもらえますか?
A. 婚約破棄に伴う損害として、婚約指輪以外の出費(結婚式の手付金・引越費用など)も損害賠償請求の対象となる場合があります。ただし、すべてが認められるとは限らず、個別の事情による判断になります。
まとめ
- 婚約指輪は「婚姻を前提とした贈与」と解されることが多く、一般的なプレゼントとは異なる扱いになる
- 返還義務があるかどうかは、誰の責任で婚約破棄になったかによって大きく変わる
- 相手の不貞・一方的な破棄が原因なら返還不要のケースが多く、慰謝料請求も検討できる
- 自分の不貞・一方的な破棄が原因なら返還義務が認められやすい
- 双方合意の場合は交渉次第。話し合いがまとまらなければ法的手続きも選択肢になる
- 感情的なやりとりはトラブルを悪化させやすい。早めに弁護士に相談を
「返せと言われて困っている」「返してほしいのに応じてもらえない」どちらの場合も、まずはお気軽にご相談ください。初回相談は無料です。








