不倫慰謝料の相場と計算方法|弁護士が解説

配偶者の不貞行為が発覚した直後のご相談で、「慰謝料はいくらくらいになりますか」と聞かれることは少なくありません。

怒りと動揺の中で、それでも「正当な金額を受け取りたい」と思う気持ちは当然です。ただ、慰謝料の金額は一律ではなく、婚姻期間・不貞の期間・子どもの有無・離婚するかどうかなど、個々の事情によって大きく変わります。

この記事では、 男女問題を中心に受任実績1,000件以上の弁護士が、相場・金額を左右する要素・増減のポイントを整理します。

目次

不倫慰謝料の相場はいくら?離婚する場合・しない場合

不倫(不貞行為)の慰謝料相場は、離婚に至った場合で100万〜300万円、離婚しない場合で50万〜150万円が一般的な目安です。なお、慰謝料請求の根拠となる「不貞行為」とは、判例上、配偶者以外の者との性的関係(主に肉体関係)を指すとされています。ただし、この金額は裁判例の傾向から導かれた参考値であり、婚姻期間・不貞の期間・子どもの有無など、さまざまな要素によって実際の金額は大きく異なります。

不倫慰謝料の金額は「離婚するかどうか」で大きく変わります。離婚に至った場合は婚姻関係が破壊されたと評価されるため金額が高くなり、離婚しない場合は夫婦関係が維持されているとして相対的に低く算定される傾向があります。以下の表が基本的な相場の目安です。

ケース慰謝料の相場備考
離婚する場合100万〜300万円婚姻期間が長いほど高額になる傾向
離婚しないが別居する場合80万〜200万円別居期間・経緯も考慮される
離婚しない場合50万〜150万円夫婦関係の修復が見込まれる場合

相場はあくまで「目安」

上記の金額は、裁判例の傾向から導き出された目安です。実際の事件では、後述する増額要因・減額要因によって、相場の範囲を上回ることも下回ることもあります。「自分のケースではいくらが妥当か」を正確に判断するには、個別の事情を踏まえた法的な検討が必要です。

慰謝料の請求先は「配偶者」と「不倫相手」の両方

不倫慰謝料は、不貞行為をした配偶者だけでなく、不倫相手に対しても請求できます。

ただし、配偶者と不倫相手は「共同不法行為者」として連帯責任を負う関係にあります。両方に請求しても合計額が二重にもらえるわけではありません。たとえば慰謝料総額が200万円と認定された場合、配偶者から150万円を受け取れば、不倫相手には残りの50万円しか請求できないという関係になります。

なお、不倫相手が慰謝料を支払った場合、不倫相手は配偶者に対して「求償権」(負担分を分担するよう求める権利)を行使できます。示談書を作成する際は「求償権を放棄する」旨の条項を入れておくことで、後から配偶者に請求が来るリスクを防ぐことができます。

慰謝料の金額を左右する7つの要素

慰謝料の金額は、裁判所が複数の要素を総合的に考慮して決定します。婚姻期間の長さ・不貞行為の期間と回数・子どもの有無・不貞前の夫婦関係・発覚後の態度・相手方の経済力・妊娠出産の有無の7つが主な判断要素です。

慰謝料の金額は、裁判所が以下の要素を総合的に考慮して判断します。一つの要素だけで決まるのではなく、複数の要素が積み重なって金額が形成されます。

1. 婚姻期間の長さ

婚姻期間が長いほど、慰謝料は高額になる傾向があります。長年にわたって築いてきた婚姻関係を破壊されたことによる精神的苦痛が大きいと評価されるためです。

婚姻期間慰謝料への影響
3年未満やや低額になる傾向
3年〜10年標準的な相場範囲
10年〜20年やや高額になる傾向
20年以上高額になりやすい

2. 不貞行為の期間・回数

不貞行為が長期間にわたっている場合や、回数が多い場合は、悪質性が高いとして慰謝料が増額されやすくなります。一度きりの過ちと、数年にわたる継続的な不倫関係では、精神的苦痛の大きさに差があると考えられています。

3. 子どもの有無・年齢

未成年の子どもがいる場合、特に幼い子どもがいる場合は、慰謝料が増額される要素になります。不貞行為が子どもの生活環境や精神面に与える影響が考慮されるためです。

4. 不貞行為前の夫婦関係

不貞行為が始まる前から夫婦関係が円満だった場合は、慰謝料が高くなりやすい傾向があります。逆に、不貞行為の前からすでに夫婦関係が破綻に近い状態だった場合は、慰謝料が減額されたり、そもそも請求が認められなかったりすることもあります。

5. 不貞行為の発覚後の態度

不貞行為が発覚した後の対応も金額に影響します。反省し謝罪している場合は減額方向に働き、開き直っている・嘘を重ねている場合は増額方向に働きます。SNS等で被害者を誹謗中傷した場合は、大幅な増額要因となります。

6. 相手方の経済力

不倫相手の収入・資産状況も、慰謝料の金額に影響する場合があります。相手方の支払能力が高い場合は、慰謝料が高めに認定される傾向が見られます。

7. 不貞行為による妊娠・出産があった場合

不倫相手との間に子どもが生まれた場合は、慰謝料が大幅に増額される傾向にあります。被害者の精神的苦痛が極めて大きいと評価されるためです。

増額されやすいケース・減額されやすいケースは?

不貞期間が長い・婚姻期間が長い・幼い子どもがいる・発覚後も不倫を継続するといった事情は増額要因になります。一方、不貞期間が短い・夫婦関係がすでに破綻に近かった・発覚後に真摯に謝罪したといった事情は減額方向に働きます。

上記の要素を踏まえて、増額・減額につながる典型的なケースを整理します。実際の案件では、どちらの要素がどの程度重なっているかによって金額の方向性が決まります。

増額されやすいケース

要素具体例
不貞期間が長い1年以上の継続的な関係
婚姻期間が長い10年以上の婚姻生活
子どもへの影響が大きい幼い子どもがいる・不登校になった等
悪質な態度発覚後も不倫を継続・被害者への嫌がらせ
不倫相手の妊娠・出産不貞行為により子どもが生まれた
社会的影響不倫が原因で被害者が精神疾患を発症

減額されやすいケース

要素具体例
不貞期間が短い数回程度の一時的な関係
婚姻期間が短い婚姻から1〜2年
夫婦関係が破綻に近かった不貞行為前から別居・家庭内別居
真摯な反省・謝罪発覚後すぐに関係を断ち、謝罪
被害者側にも原因がある被害者のDV・モラハラが原因で不倫に至った
すでに相当額の支払いがある配偶者から十分な慰謝料を受領済み

不倫慰謝料に「計算式」はある?実務での決まり方

法律上も裁判実務上も、不倫慰謝料に決まった計算式はありません。金額は裁判官の裁量的判断によって決まるため、同じように見える事案でも結果が異なることがあります。実際には約7〜8割が交渉(示談)で解決し、残りが裁判に至ります。

インターネット上では「不倫慰謝料の計算式」として具体的な数式が紹介されていることがありますが、実際の裁判実務では決まった計算式は存在しません。裁判所は、前述した各要素を総合的に考慮したうえで、裁判官の裁量によって金額を決定します。

交渉で決まるケースと裁判で決まるケース

交渉で決まるケース(約7〜8割):当事者間、または弁護士を通じた交渉で合意に至るケースが大半です。裁判例の相場を参考にしつつ、双方の事情を踏まえた金額で示談が成立します。

裁判で決まるケース(約2〜3割):交渉で合意に至らない場合は、裁判所に判断を委ねることになります。裁判では、証拠に基づいて各要素を認定し、裁判官が金額を決定します。

「相場より高い金額」を目指すために必要なもの

慰謝料を増額するためには、増額要因を裏付ける証拠をしっかりと確保することが重要です。不貞行為の証拠(メッセージ・写真・ホテルの利用履歴等)に加え、不貞行為の期間・回数を示す資料、精神的苦痛を示す診断書(心療内科の受診記録等)、相手方の態度を示す記録(謝罪文・逆に開き直りの発言記録等)が揃っていれば、交渉でも裁判でも有利に進めることができます。

慰謝料請求の流れと時効

慰謝料請求は、証拠収集→内容証明送付→交渉→示談書作成という流れが一般的です。なお、不倫慰謝料の請求権には時効があり、不貞の事実と相手方を知った時から3年で消滅します。この期間を過ぎると請求が困難になるため、早期の対応が重要です。

請求の基本的な流れ

  1. 証拠の収集 — 不貞行為を証明する証拠を確保する
  2. 内容証明郵便の送付 — 慰謝料の請求書を相手方に送る
  3. 交渉 — 金額・支払方法について話し合う
  4. 示談書の作成 — 合意内容を書面にまとめる(公正証書にすることも可能)
  5. (交渉不成立の場合)裁判手続き — 訴訟を提起して裁判所の判断を仰ぐ

時効に注意

不倫慰謝料の請求には時効があります。不貞行為と相手方を知ったときから3年(民法724条1号)、または不貞行為のときから20年(民法724条2号)のいずれか早い方が経過すると、相手方から時効の援用(主張)をされた場合に慰謝料を請求できなくなります。

なお、20年の期間は2020年の民法改正により「除斥期間」から「消滅時効」に変更されました。相手方が援用しない限り当然には消滅しませんが、時効完成後の援用リスクを避けるためにも、不貞行為を知ったら早めに行動することが重要です。

慰謝料請求だけでなく「今後の人生」も見据えて

1,000件以上の男女問題に携わってきた経験から申し上げると、慰謝料の金額だけに目が向いてしまい、その後の生活設計が後回しになるケースは少なくありません。離婚するのか、しないのか。離婚する場合は財産分与・養育費・親権など、慰謝料以外にも決めるべきことが多くあります。

慰謝料の請求は「問題の解決」であると同時に、「これからの人生をどう歩むか」を考えるきっかけでもあります。金額の交渉だけでなく、ご自身の今後を見据えた判断をしていただくことが、結果として最善の解決につながります。

よくある質問

不倫慰謝料に「決まった計算式」はありますか?

法律上も実務上も、不倫慰謝料の決まった計算式はありません。裁判所は婚姻期間・不貞期間・子どもの有無・相手方の態度など複数の要素を総合的に考慮して金額を決定します。インターネット上で紹介されている「計算式」は、あくまで参考程度にとどめましょう。

不倫相手の名前や住所が分からない場合でも請求できますか?

弁護士に依頼すれば、弁護士会照会(23条照会)などの手続きを通じて相手方の情報を調査できる場合があります。電話番号やSNSアカウント・車のナンバーなど、手がかりとなる情報があれば特定の可能性が高まります。

不倫慰謝料を請求された側です。減額交渉はできますか?

減額交渉は可能です。請求金額が裁判相場と比べて高すぎる場合や、減額要因(夫婦関係の破綻・短期間の関係・真摯な反省等)がある場合は、適正な金額への減額を交渉で求めることができます。

慰謝料は一括で支払わなければなりませんか?

法律上は一括払いが義務付けられています。しかし、交渉次第では分割払いの合意が成立することもあります。ただし、分割払いの場合は途中で支払いが滞るリスクがあるため、あまりにも長期分割になる場合は、公正証書を作成して強制執行の手続きを確保しておくことが重要です。

弁護士に依頼すると費用はどのくらいかかりますか?

弁護士費用は事務所によって異なりますが、不倫慰謝料の請求では着手金10万〜30万円程度、成功報酬として回収額の10〜20%程度が一般的な目安です。相談時に費用の見通しを具体的にお伝えしていますので、費用面が不安な方もまずはご相談ください。

まとめ

不倫慰謝料の相場は、離婚する場合で100万〜300万円、離婚しない場合で50万〜150万円が目安です。ただし、実際の金額は婚姻期間・不貞期間・子どもの有無・相手方の態度など、さまざまな要素によって変動します。「自分のケースではいくらが妥当なのか」を正確に知るためには、個別の事情を踏まえた法的なアドバイスが不可欠です。おひとりで悩まず、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

弁護士/心理カウンセラー/夫婦カウンセラー

法律と心、両方の視点から問題に向き合い、「本当に納得できる解決」を大切にしています。
男女問題・借金問題・交通事故など、心の負担が大きいトラブルや人間関係のお悩みに強みがあります。法律実務歴10年以上。安心してご相談ください。

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