交通事故の被害者が大変苦しむケースが
相手が「無保険」の状態である、
というケースです。
具体的には、
・任意保険に加入していない
・任意保険には加入しているが、敢えて保険を利用しようとしない
というケースがあります。
信じられないかもしれないですが、
任意保険の加入率は、自動車の場合約83%、バイクの場合はなんと約44%といわれています。
そのため、事故に遭った場合、相手が任意保険に加入していないということは、現実として十分あり得るのです。
(参照:損害保険料率算出機構 自動車保険の概況 2020年度版)
このような場合、被害者としては
・本当に適切な賠償をしてもらえるのか?
・泣き寝入りにならないか?
と不安になると思います。
そこで、今回は、
相手が「無保険」の場合でもしっかりと賠償額を回収する方法について、解説します。
1. 加害者への直接請求
1-1. 内容証明郵便による請求
加害者の住所は、交通事故証明書に記載されますので、宛先は容易にわかります。
そこで、記載住所あてに、内容証明郵便にて、金額の請求をすることが考えられます。
この場合、「いつまでに」「いくら」を「どの口座に」振り込むのか、そして、「対応しない場合はどうなるか」は明記する必要があるでしょう。
1-2. 訴訟
次に、訴訟提起による解決が考えられます。
請求額が60万円以下の場合は、少額訴訟という迅速・簡略な手続を利用することがあります。
単にお金の問題や感情的な理由だけで相手が支払わないのであれば、審理自体も簡単なもので間に合いますので、少額訴訟をすることがおすすめになります。
もっとも、手続が簡略な分、最初から適切な証拠を提出しておかなければ、不用意な敗訴を招いてしまいます。
2. 加害者以外への請求
次に考えるのが、加害者「以外」の第三者への請求になります。
法律上、交通事故の損害賠償請求の相手方は、加害車両の運転手以外にもいるのです。
ここでは、代表的な「運行供用者」について解説していきます。
2-1. 運行供用者とは
自賠責法3条が規定する「自己のために自動車を運行の用に供する者」のことです。
そして、最高裁判決は、この「自己のために自動車を運行の用に供する者」について、「自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用により享受する利益が自己に帰属する者を意味する」、としています(最判S43.9.24)。
自動車損害賠償保障法第3条
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
したがって、「運行供用者」に該当するかは、①運行支配(支配権)と②運行利益(享受する利益が帰属)の2つがポイントである、と解釈されています。
そして、当該車の所有者または使用者が請求相手となっている場合は、そのことを主張立証すれば足り、当該所有者または使用者のほうで、①運行支配や②運行利益を失っていたことを反証しなければならないと考えられています(抗弁説)。
そのため、相手の車の車検証を確認して、所有者や使用者が誰になっているかを確認することが、とても大事になります。
ただ、相手の車の車検証は、簡単には手に入りません。弁護士であれば、交通事故証明書をもとに入手できる場合がありますので、お気軽にご相談ください。
2-2. 運行供用者の具体例
以下、過去の裁判例で認められた例を列挙します。
もっとも、実際はケースバイケースですので、その点予めご了承ください。
・当該車両の所有者/使用者(ローン会社等は除く)
・レンタカー業者などの車の貸主
・子供が運転していた場合の親
・勤務先/雇い主(社用運転中、通勤中の場合)
2-3. 注意点
運行供用者に対する請求は、あくまでケガの部分、いわゆる人損のみになります。車の修理費等の請求には適用されませんので、ご注意ください。
3. 利用できる保険を利用する
相手の任意保険が利用できなかったとしても、他にも利用できる保険があります。
最善を尽くしましょう。
3-1. 自賠責保険/政府保障事業
相手が自賠責保険に加入していれば、当該保険会社へ請求します。
相手がどの自賠責保険に加入しているかは、交通事故証明書を見ればわかります。
相手が自賠責保険にすら加入していない場合は、政府保障事業への請求となります。
いずれも、書類の準備等が必要になりますので、請求方法が分からない場合や、手続きが面倒だという方は、お気軽にご相談ください。
3-2. 労災/健康保険
勤務中や通勤中の事故であれば労災保険が使用できます。
また、労災保険が利用できない場合も、治療に際し健康保険を利用することができます。
3-3. 自分の保険(人身傷害保険/車両保険)
被害者自身が加入している保険の中に、自らの損害を賠償してくれる内容の保険(人身傷害保険や車両保険など)があれば、それを利用するのも手です。
3-4. 弁護士特約
ただ、上記のいずれも、本来得られる賠償額を満額得られるものではありません。
そこで、弁護士特約に加入していれば、リスクなく弁護士に依頼し、加害者本人や、運行供用者に対する請求をすることができます。
4. 相手が「無保険」だからこそ弁護士に依頼すべき理由
以上、簡略に説明しましたが、大事なことは、これがご自身でできるのか、ということです。
そもそも、事故に遭って痛い思いをして、通院もして、遅れた仕事を取り返さなければならないのに、内容証明郵便や訴状を作ったり、相手の車検証を取りに行ったり、請求に必要な書類を揃えたり…。
現実的には、かなり難しいのです。
そこで、相手が「無保険」の場合こそ、弁護士に一度相談してほしいと思います。
泣き寝入りをする必要はありません。
本サイトでは、相手が「無保険」の場合でも、そのことだけを理由にご依頼をお断りすることはございません。
実際、当職は、相手が「無保険」の事故に遭遇された方からのご依頼を数多く頂戴しております。
相談料は無料ですし、ここには記載できない話もありますので、ぜひお気軽にご相談ください。
5. まとめ
・相手が「無保険」の場合、加害者本人のほかに、「運行供用者」にも請求できる
・任意保険以外にも利用できる保険がある
・いずれも手続きは面倒で複雑なので、弁護士に相談する。泣き寝入りしない。
まずは、お気軽に無料相談をお問合せください。
少しでも被害者が報われる結果になることを祈念しております。
弁護士 小林 聖詞