求償権を放棄していないか確認する3つのポイント【弁護士解説】

慰謝料を払い終えてしばらく経ってから、「あのとき交わした示談書で、求償権まで放棄してしまっていたのだろうか」と気になり始める方がいらっしゃいます。

「求償権を放棄する」「相互に求償しない」といった明確な条項が示談書に入っていた場合、原則として不貞配偶者への請求はできません。

ただ、「一切の債権債務がない」という清算条項については解釈に幅があり、その文言があるからといって、必ずしも行使できないと決まるわけではありません。ご自身の判断で諦めてしまう前に、書面を弁護士にお見せいただければと思います。

以下では、男女問題を含めた1,000件以上の案件を扱ってきた弁護士としての立場から、お手元の書面で求償権を放棄していないかを確かめる手順を、順にお話しします。

目次

この記事でわかること

求償権を放棄しているかどうかは、お手元の書面を順に見ていけば確かめられます。どの書面を見るのか、どんな文言に注意すればよいのか、そして実際に文言が見つかったときや判断に迷ったときにどうするか。この順でご説明します。

  • 求償権を放棄しているかどうかを、どの書面で確認するか
  • 放棄に当たる典型的な文言の例
  • 「一切の請求をしない」という清算条項に注意すべき理由
  • 文言が見つかった・判断に迷うときにどうするか

ポイント1:確認すべき「書面」を手元に出す

求償権を行使するには、不倫の事実と慰謝料を支払った事実を示す書面が必要です。同時に、その書面の中に求償権を放棄する内容が書かれていないかも確認します。まずは、慰謝料の支払いに関して取り交わした書面を、すべて手元に出しておくと確認がスムーズです。

書面の種類どんなもの
示談書・合意書当事者どうしで取り交わした私製の書面
公正証書公証役場で作成した書面
和解調書裁判所での和解の内容を記した書面
判決裁判所が言い渡した判決文

書面が手元にない・紛失したという場合も、相手方や公証役場に控えがあることがあります。まずは「ある書面をすべて確認する」ことから始めることをおすすめします。

ポイント2:放棄に当たる「文言」を確認する

書面の中に、次のような文言がないか目を通してみてください。これらがあると、求償権を放棄したと判断される可能性があります。特に注意したいのは「清算条項」です。「求償権」という言葉が使われていなくても、広く権利を放棄したと解釈される余地があります。

  • 求償権を放棄する
  • 相互に求償しない」「今後一切の求償を行わない」
  • 本件に関し、互いに何らの債権債務がないことを確認する」(清算条項)
  • 「以後、本件について一切の請求・異議申立てをしない」
文言の種類放棄に当たるか注意点
「求償権を放棄する」と明記◎ 放棄と判断される原則として求償リカバリーの対象外
「相互に求償しない」「今後一切の求償を行わない」◎ 放棄と判断される同上
「一切の債権債務がないことを確認する」(清算条項)△ 解釈に幅がある自己判断せず弁護士に確認を
求償権に関する記載がない✕ 放棄していない可能性が高いまだ行使できる可能性がある

清算条項(「一切の債権債務がないことを確認する」)は、一見すると求償権と関係ないように見えます。しかし、こうした条項が「不貞配偶者への求償権まで放棄させるものか」は、書面の当事者や文脈によって解釈が分かれる場合があります。文言があるからといって、必ずしも一律に行使できないと決まるわけではありません。

ポイント3:見つかった・迷ったときは弁護士に確認する

文言を確認した結果は、大きく2つに分かれます。「明確な放棄条項がある場合」と「文言がない・迷う場合」です。どちらのケースでも、自己判断で結論を出す前に弁護士に相談することをおすすめします。書面の文言の意味は専門的な判断が必要で、状況によっては見かけ以上に選択肢が残っていることがあります。

明確な「求償権放棄」条項がある場合

「求償権を放棄する」と明確に書かれている場合は、原則として求償できません。残念ながら、求償リカバリーの対象外となります。ただし、書面の作成経緯や相手方の関与の仕方によって、例外的な争い方の余地がゼロかどうかは、書面を見て判断する必要があります。

文言がない・判断に迷う場合

「それらしい文言が見当たらない」「清算条項はあるが求償権のことは書いていない」「自分では判断がつかない」。このような場合は、まだ求償できる可能性があります。自己判断で諦めてしまう前に、弁護士に書面を見せて確認することをおすすめします。

よくある質問

「一切の請求をしない」と書いてあったら求償権も放棄したことになりますか?

必ずしもそうとは言い切れません。この文言(清算条項)が「不貞配偶者への求償権まで含むか」は、示談書の当事者が誰か、どのような文脈で合意されたかによって解釈が変わる場合があります。文言があるからといって諦めず、一度弁護士に書面を見せて確認することをおすすめします。

弁護士をつけずに示談したので、細かい文言を覚えていません。どうすれば確認できますか?

示談書の控えを保管している場合は、まずそちらを確認してみてください。手元にない場合は、相手方に写しがある可能性があります。公正証書であれば、公証役場に謄本の交付を申請できます(手数料がかかります)。書面が見つかったら、弁護士に内容を確認してもらうのが確実です。

示談書に求償権についての記載がまったくない場合は、求償できますか?

放棄の記載がなければ、求償権はまだ残っている可能性が高いといえます。ただし、時効(支払い完了から5年)が経過していないかの確認も必要です。「文言がない=確実に行使できる」とは言い切れない部分もあるため、書面の全体を弁護士に確認してもらうことをおすすめします。

判決で支払いを命じられた場合でも、求償権の確認は必要ですか?

必要です。判決文の中に、求償権の放棄や一切の請求をしない旨が含まれているケースは少ないですが、和解に切り替わった場合や、訴訟外で別途合意書を作成していた場合は、その内容も確認が必要です。

まとめ

求償できるかどうかは、まず手元の書面(示談書・公正証書・和解調書・判決)を確認することから始まります。

確認結果対応
「求償権を放棄する」「相互に求償しない」と明記されている原則として求償不可。求償リカバリーの対象外
「一切の債権債務がない」(清算条項)がある解釈に幅あり。自己判断せず弁護士に確認
求償権に関する記載が見当たらないまだ行使できる可能性がある。弁護士に確認を
書面が手元にない・確認できない相手方・公証役場に控えを確認。弁護士に相談

「あの書面、どうだったかな」と気になっている方は、その書面を手元に、一度ご相談ください。確認するだけでも、はっきりします。

この記事を監修した弁護士

小林 聖詞(こばやし さとし)/東京弁護士会(登録番号51560)

男女問題を含めた1,000件以上の案件を担当。不貞慰謝料・離婚を数多く手がけています。JADP認定メンタル心理カウンセラー・夫婦カウンセラー。

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この記事を書いた人

弁護士/心理カウンセラー/夫婦カウンセラー

法律と心、両方の視点から問題に向き合い、「本当に納得できる解決」を大切にしています。
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