不倫の示談書に違約金条項を入れられたら?高額な違約金は有効か

ご相談者様の中には、不倫の慰謝料について話し合いがまとまりかけたところで、相手方から示談書の案が送られてきて、その中に「今後接触した場合には、違約金として金○○万円を支払う」という条項が入っていて、このまま署名してよいのか分からなくなってしまった、という方がいらっしゃいます。
慰謝料の額には納得していても、違約金の額が慰謝料よりも大きく書かれていたり、同じ職場で働いているために、仕事の連絡まで違約になってしまうのではないかと心配になってしまったりして、署名をためらっている方も少なくありません。
違約金の条項そのものは、原則として有効です。ただ、額が過大な場合には、裁判で減額されたり、無効とされたりすることがあります。また、署名の前であれば、示談書はまだ案の段階ですので、金額や、何をしたら違約になるのかについて、話し合って変えることができます。以下、違約金の条項で確認しておきたいことと、署名の前後にできることについてお話しします。
違約金の条項は、原則として有効です
示談書は、当事者が合意して取り交わす契約ですので、その中に違約金の条項が入っていれば、原則としてその内容に従うことになります。
民法420条は、契約に違反した場合に支払う損害賠償の額を、あらかじめ当事者の間で決めておくことを認めており、違約金は、この損害賠償の額の予定と推定されます(同条3項)。違約金が定められていると、約束に反する行為があった場合に、請求する側は実際にどれだけの損害が生じたかを証明しなくても、定められた額を請求することができます。
不倫の示談書では、今後交際相手と接触しないことを約束する条項(接触禁止)や、不倫のことを第三者に話さないことを約束する条項(口外禁止)に、違約金が付けられていることが多くあります。
違約金は、すでに起きた不倫に対する慰謝料とは別のもので、示談のあとに約束に反する行為があった場合に、慰謝料とは別に支払うことになるお金です。示談書の案を確認するときには、慰謝料の額だけでなく、違約金がどの約束に付けられているのか、接触禁止だけなのか、口外禁止にも付けられているのかを、あわせて見ておいていただくと安心です。
額が過大な違約金は、減額されたり無効とされたりすることがあります
違約金の条項が原則として有効であるといっても、どのような額でも認められるわけではありません。違約金の額が、約束によって守ろうとしている利益に比べて著しく過大な場合には、公序良俗(民法90条)に反するものとして、過大な部分が無効とされることがあります。
不倫の示談書の違約金についても、裁判で、示談書に書かれた額よりも低い額に減額された例があります。どの程度の額であれば過大と判断されるかは、慰謝料の額や、違反の内容、違反に至った経緯などによって変わりますので、一律の基準があるわけではありません。
ただ、減額されることがあるといっても、それは裁判で争った結果としてのことで、署名をした以上は、まず書かれた額を請求されることになります。署名の前に、額そのものを見直しておくことが最も負担の少ない方法です。
「接触」の範囲があいまいな条項は、意図しない違約につながります
違約金の額と同じように確認しておきたいのが、何をしたら違約になるのかということです。示談書の案には、「一切の接触をしない」とだけ書かれていることがありますが、この書き方ですと、どこまでが「接触」にあたるのかが分かりません。
たとえば、次のような場合に違約にあたるかどうかが、後から争いになることがあります。
- 同じ職場で働いていて、業務上必要な連絡をした場合
- 偶然、駅や店で顔を合わせてしまった場合
- 共通の友人の集まりに、たまたま二人とも参加していた場合
- SNSのアカウントをフォローしたままになっていた場合
同じ職場で働いている場合には、業務上の連絡をまったくしないことは現実的ではありませんので、「業務上必要な連絡を除く」といった除外を書き加えておくことが考えられます。どこまでを禁止するのかを、ご自身の生活や仕事の状況に照らして具体的にしておくことで、意図しないまま違約金を請求されることを防ぐことができます。
また、交際相手の側から連絡が来てしまった場合にどうするかも、考えておく必要があります。こちらから連絡をしていなくても、返信をしてしまえば接触にあたると主張されることがありますので、相手から連絡が来た場合には応じないこと、連絡が来たことを記録に残しておくことなど、対応の仕方をあらかじめ決めておくことをおすすめします。
交際相手の連絡先の削除を求められている場合につきましては、異性の連絡先を全て削除しろと言われたらもあわせてご覧ください。
署名の前であれば、違約金の額と対象を交渉することができます
示談書の案は、相手方から送られてきたものであっても、署名をするまでは確定したものではありません。違約金の額や、違約にあたる行為の範囲について、見直しを求めることができます。
当事務所では、慰謝料を請求された側のご依頼で、示談書の案から違約金の条項を外したり、違約金の額を減らしたりしたことがあります。その際には、違約金の額が高すぎると、裁判になったときに無効とされたり減額されたりするおそれがあり、そのような条項を入れても請求する側にとってメリットがない、ということを相手方に説明して、納得していただきました。
請求する側にとっても、示談書の目的は、慰謝料を受け取ることと、今後接触しないという約束を守ってもらうことにありますので、裁判で争われるような額を書くことに固執するよりも、守られる内容で合意するほうが利益になる場合があります。そうした点を踏まえて話し合うことで、条項の見直しに応じてもらえることがあります。
示談書には、違約金の条項のほかに、示談で解決したことを確認して、それ以外の請求をしないことを約束する条項(清算条項)なども入っています。示談書の効力につきましては、不貞慰謝料の示談後に再度請求できる?に記載しております。
違約金の額をあえて書かない示談書もあります
男女問題の示談書を当事務所で作成する場合には、違約金の額をあえて書かない方針をとっています。違約金の額を書いてしまうと、一定数の方が、その額を払えば約束を破ってもよい、と受け取ってしまうためです。
額が書かれていない場合でも、約束に反して接触したときには、それによって生じた損害を賠償する責任を負うことに変わりはありません。そのため、請求された側の方が、違約金の額が書かれていないから違反しても払わなくてよい、と受け取ってしまうことは避けていただく必要があります。
示談書の案に違約金の額が書かれていない場合には、その条項で何が禁止されているのか、違反したときにどのような責任を負うことになるのかを確認しておくことをおすすめします。
署名してしまったあとでも、過大な部分は争う余地があります
すでに示談書に署名してしまった場合には、原則として、その内容に従うことになります。ただ、違約金の額が著しく過大であれば、実際に違約金を請求されたときに、過大な部分は無効であるとして減額を求めることができる場合があります。
また、脅されて署名させられた場合など、限られた場合には、示談書の取消しを主張できることもあります。
いずれにしても、署名してしまったあとに最も大切なのは、示談書に書かれた約束を守ることです。どの行為が違約にあたるのかがはっきりしない場合には、ご自身で判断してしまう前に、条項の意味を確認しておくと安心です。相手方から違約金を請求された場合には、どのような行為が違約にあたるとされているのかを確認したうえで、回答を考えることになります。
よくあるご質問
不倫の示談書の違約金の条項は、原則として有効ですが、額が過大な場合には減額されたり無効とされたりすることがあり、署名の前であれば、違約金の額や、何をしたら違約になるのかについて交渉することができます。
示談書の案が届いて、このまま署名してよいのか迷っている方は、署名をしてしまう前に、一度示談書の案をお見せください。初回のご相談は無料です。








