交通事故のご相談をいただくなかで、「打ち切り」に関するご相談をいただくことは非常に多いです。

よくあるご相談としては、保険会社から、

『突然、事故から3か月になるので通院を終了してください』

『そろそろ、通院はやめて、後遺障害の申請に移行されたらいかかですか』

『もう症状固定だと思います』

と言われました、というものが挙げられます。

 

しかし、

・「打ち切り」とは

・「打ち切り」になった後はどうなるのか

・「症状固定」との違いは何か

といったことは、被害者にはなかなか分かりません。

 

そこで、本稿では、「打ち切り」とその対応策について、説明します。

 

「打ち切り」とは

そもそも、「打ち切り」とは、だれが、何を打ち切るものでしょうか?

答えは「保険会社が、治療費の一括対応を打ち切る」というものです。

さらに簡単に言えば、今まで、被害者が、病院の窓口で治療費を支払わずに済んでいたものが、今後は、自分で治療費を支払わなくてはならなくなる、というものです。

被害者にとっては一大事です。

ただし、ここでポイントになるのは、「一括対応」というのは、保険会社の義務ではなく、あくまで保険会社のサービスである、ということです。

ですから、「一括対応」を「打ち切る」かは、保険会社が自由に決めることができてしまうのです。

そのため、一度「打ち切り」と言われたら、これを回避することは簡単ではありません。

 

「打ち切り」になった後はどうなるのか

打ち切りになってしまったからといって、通院を辞めなければいけないということはありません。

その後、自費で通院するかは、被害者の自由に委ねられています。

自費通院の場合、一般的には健康保険を利用することができますので、健康保険を使用して通院することになります。

自費通院分の治療費等の交渉は難航しますので、打ち切りに納得できず、通院を継続された場合は、お早めに弁護士に相談することをお勧めいたします。

 

「症状固定」との違い

保険会社の多くは、打ち切りの理由について、『症状固定だから』と説明してきます。

そこで、症状固定についても説明します。

症状固定とは?

症状固定とは、「もうこれ以上通院しても、良くならない」とか、「もうこれ以上通院しても、その時は少しは良くなるかもしれないけど、すぐに元に戻ってしまう」など、もう通院の効果が事実上無いような状態になったことをいいます。

症状固定時を記載した診断書(後遺障害診断書)を作成するのは医師であり、そこに症状固定日が記載されるため、症状固定というのは医師が決めるものと思われがちです。
しかし、症状固定というのは、法律の話です。そのため、医師の判断が絶対ではないということに注意が必要です。

症状固定と法律

ここで、そもそも、交通事故において、怪我をした場合に、相手への損害賠償が認められる根拠は、自動車損害賠償保障法(自賠責法)3条、民法709条となります。

(自動車損害賠償責任)

自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

自動車損害賠償保障法(自賠責法)3条

(不法行為による損害賠償)

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法709条

いずれにしても、賠償の対象となるのは、交通事故と「因果関係」がある損害、となります。

そして、症状固定になったら、その後の治療費は、もう症状に影響していないので、交通事故と「因果関係」がある治療費とはいえない、ということなのです。

これが、「症状固定」の本当の意味です。

ですから、「症状固定」となった場合、その後の治療費などは原則として請求できなくなります。

その代わりに、「症状固定」になってもまだ痛みがあるなどの問題がある場合は、「治療費しても治らない症状が残った」、ということで、後遺障害の問題になります。

症状固定のメリット・デメリット

症状固定のメリットとしては、後遺障害等級の申請ができるようになります。

十分な賠償を得るためには、後遺障害等級の申請が不可欠です。

申請については、こちらのコラムで解説していますので、ご参照ください。

次に、デメリットとしては、

症状固定後の治療費は原則請求できなくなる
休業損害も原則として発生しなくなる(後遺障害の問題になる)

といったことが挙げられます。

保険会社が、「症状固定」を決めるものではない

さて、以上説明したことで、大事なことは、「症状固定」は【法律の話】だ、ということです。

ようは、保険会社が、一方的に、あなたの症状固定日を勝手に決める権利はどこにもないのです。

もし、症状固定ではと言われたら、まずはお医者様に、今後の治療の見込みや方針などを聞いてみて、最終的には自分で症状固定日を決めていきましょう。分からなかったら、交通事故の経験が豊富な弁護士に相談するのも一つの手です。

 

「打ち切り」への対応策

被害者からすると、できるだけ「打ち切り」は避けたいですよね。

そこで、「打ち切り」を延長するためには、保険会社に、まず、打ち切りになりそうな理由を聞いてみましょう。

この場合、殆どのケースで、「そろそろ通院が●ヶ月になるので」「事故が軽微でしたし、そこまで通院するケースでは無いと思います」など、事実上、症状の話を出してくると思います。ようは、症状固定になりそうだから、ということです。

これに対して、被害者は、保険会社の言うことを直ぐに受け入れず、交渉してみましょう。

主な交渉ポイントは以下のとおりです。

① 通院先の医師に意向を確認する

まずは、通院先のお医者さんに、保険会社から打ち切りを予告されたことと、今後、通院を継続する必要があるかを聞いてみましょう。

お医者さんから、通院を継続する必要があるといわれたら、そのことを保険会社に説明してみましょう。

② 通院終了の目安を決める

次に、「あと1か月で通院を終了するので」など、通院終了の目安を決めて伝えてみることも大事です。

通院期間は、治療費だけでなく、慰謝料の金額にも影響がでてきますので、保険会社としては、通院期間のめどがたつなら、打ち切りを延長してもいいと思うことがあります。

また、たまに、打ち切りの理由として「通院が多すぎる」と言われることもあります。

この場合は、通院終了の目安を決めるのとは別に、通院回数を減らすなど、譲歩をしてみて話合いの余地を探りましょう。

③ 弁護士に依頼する

①や②の交渉を被害者が自分で行うというのは、被害者にとって負担ですよね。弁護士特約がある場合であれば、通院中でも、遠慮なく弁護士に依頼して、打ち切り回避のための交渉を依頼することができます。

 

まとめ

以上、打ち切りと症状固定について説明してきました。

まとめると以下のとおりです。

・ 一括対応を打ち切るかは、保険会社が一方的に決められる
・ ただ、その理由が症状固定であることが多い
・ しかし、症状固定は法律の話で、保険会社が一方的に決められるものでは無い
 →交渉の余地がある

難しい話だと思いますので、何度も読み返してみてください。

それでもよくわからないようであれば、お気軽にご相談ください。

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弁護士 小林 聖詞