You are currently viewing 【全損】であったとしても、金額の交渉ができます

【全損】であったとしても、金額の交渉ができます

車やバイク、自転車等に乗車中に事故に遭った場合、その修理費などが賠償の対象になります。

しかし、どのような場合でも、修理費の全額を払ってもらえるわけではありません。

なかには、「全損」といわれて、被害者に過失が無いにもかかわらず、修理費が支払われない、というケースもあります。

そこで、本稿では、交通事故における修理費の賠償や、全損の仕組み、そして全損の場合の対処方法等について言及します。

修理費

事故に被害に遭った場合、原則として、当該車両の修理費が、損害賠償の対象となります。

もっとも、単なる修理費の賠償といえど、これまでの経験上、トラブルになることがあります。

以下、代表的なケースについて言及します。

見積書について争いがある場合

修理費は、車を持ち込んだ修理業者が見積書を発行し、保険会社に支払いを依頼します。

多くの場合、保険会社が、修理業者と修理範囲や金額を協議し、いわゆる「協定」を成立させます。

この場合、保険会社と争いになることはまずありません。

しかし、協定がなされない場合は、修理費の金額について争いになることがあります。

争いになる主なポイントは、①修理範囲が異なる、②修理内容が異なる、③修理範囲も修理内容も問題は無いが、金額の単価が異なる、というものです。

ポイントごとに対応も異なりますので、まずはどのポイントが問題になっているかを理解することが大事になります。

①修理範囲が異なる場合

当然ですが、事故と関係がある部分の損傷だけが賠償の対象となりますので、事故とは関係のない傷しかない箇所は、修理範囲の対象外となります。

例えば、車の左側が擦ったような軽微の事故の場合、どこまでが事故による傷で、どこまでが日常使用の際に発生した傷か、わかりづらい場合があります。

このような場合は、相手方車両の損傷箇所と高さが一致しているかということや、事故状況に即した損傷の入力方向になっているか、等の観点から判断されることが多いですが、一見では難しく、争いになることがあります。

②修理内容が異なる場合

よくあるケースが、破損した部分について「板金修理」をするか、それとも「部品交換」をするか、というケースです。

この場合は、なぜ板金修理でよいのか、もしくはなぜ板金修理では足りないのか、という点を、修理業者にご説明いただいた上で、双方の意見を調整する必要があります。

なお、事故によりタイヤホイールが1つだけ損傷し、交換を要する場合に、もう同じデザインが生産されていないため、交換すると他の3つのホイールとデザインが異なってしまう、というケースも少なくありませんが、このような場合に、残りの無傷の3つのホイール分までの賠償はまず認められません。

③修理範囲も修理内容も問題は無いが、金額の単価が異なる場合

また、修理範囲も修理内容も問題ないが、金額の単価だけが問題になることもあります。

この場合、車の修理を実際にされる場合は、特にどのような結論でも問題はありませんので、実際にはあまり大きな問題にはなりませんが、修理費をベースに算出される評価損を請求するケースなどで、問題になることがあります。

結論としては、「自研センター方式」による単価の算定であれば、裁判所は信用する傾向にあるといえます。見積書を見れば、「自研センター方式」であるかが分かりますので、ご不安な方は、見積書をお手元に、一度ご相談いただければと思います。

「修理しなければ修理費を支払わない」という主張は成り立たない

また、よくご質問をいただくのが、「事故にあったけど、修理をしなくてもいいですか?」というものです。

このような質問が生まれる背景には、「修理しないと、修理費を支払ってもらえない」という考えがあるように思われます。

しかし、実際にはそのような考えは成り立ちません。

法律上、請求できる損害というのは、事故にあって、車に損傷が生まれた時点で発生しているのであって、修理をすることで初めて発生するものではないからです。

そのため、実際に車を修理しなくても、修理費を受け取ることができます。

ただし、このときに、修理費に発生する消費税まで請求できるかには争いがあります。

全損

一般的に言われる全損とは、正確には「経済的全損」といいます。

誤解を恐れずにいえば、「修理費」と「その車の中古価格」を比較して、「修理費」の方が高い場合、低いほうの「中古価格」を賠償すればよい、という考え方です。

修理費よりも中古価格の方が低いのであれば、そのお金を払えば車ごと買い換えられるため、それ以上の賠償には相当性が認められず、修理費自体は支払われないという論理です。

この論理は判例上も確立していますので、全損という論理自体を争うことに意味はありません。

全損時も交渉は可能

では、保険会社から全損と指摘された場合、それ以上何もできないのでしょうか。

そのようなことはありません。

全損になったからといっても、「全損額」は争うことができる場合があります。

これは、多くの保険会社が、新車価格の10%などと、車の減価償却率などをベースに計算することが多いのですが、実際の中古車市場の平均的販売額が、それよりも高いことが多いためです。

さらに、全損の場合は、買替時諸費用も上乗せして請求することができます。

そのため、全損でも、意外と交渉できる余地があります。
もし、弁護士特約にご加入であれば、リスク無く弁護士に交渉の依頼ができますので、全損の交渉のみでも、ご遠慮なくお問い合わせいただければと思います。

なお、全損の場合は、保険法との兼ね合いもあり、車の所有権が保険会社に移る、ということが多いです。

そのため、全損の賠償を受け取って、かつ、車を廃品処理等に回して、さらにプラスの利益を得るというのは、基本的にできないと考えられます。 

まとめ

・修理費のトラブルは、まず、どのポイントがトラブルになっているかを理解する

・全損と言われても、すぐに提示金額に応じない

・弁護士特約に加入していれば、全損の交渉だけでも、ご依頼可能

このような修理費や全損のトラブルに巻き込まれているのであれば、ぜひ一度当サイトまでお問い合わせしてみてください。

弁護士 小林 聖詞

弁護士 小林 聖詞

東京弁護士会所属。

コメントを残す