目の後遺障害|視力低下・複視・視野・まぶたの認定等級と慰謝料を解説

交通事故で視力低下・複視・視野狭窄・まぶたの欠損などが残った──。「失明や視力低下で何級が認定される?」「複視は何級?」「視野狭窄は?」──こんな疑問を抱えていらっしゃる方は多いのではないでしょうか。

目の後遺障害は、症状(視力低下・複視・視野狭窄・まぶた)と影響範囲(両眼・1眼)によって、別表第二の1級〜14級のほぼ全等級にわたって認定されます。この記事では、元保険会社側代理人弁護士として保険会社の評価実務を内側から知る弁護士が、目の後遺障害認定の仕組みを解説します。

目の後遺障害で等級が変わる最大のポイントは、「両眼か1眼か」「症状の種類(視力・複視・視野・まぶた)」「客観的な検査結果を揃えられるか」の3点です。保険会社は症状の程度や検査の信頼性を争ってくることが多く、専門的な医証の収集と組み立てが認定結果を左右します。


目次

目の後遺障害認定の仕組み|5つの障害区分

自動車損害賠償保障法施行令の別表第二では、目の後遺障害を大きく5つの区分に整理して等級を設けています。各区分の認定には、それぞれ対応する専門的な検査結果が必要です。

障害区分主な症状主な立証検査
視力障害視力低下・失明矯正視力検査(眼科専門医)
複視物が二重に見えるヘスチャート、複視検査
視野障害半盲症・視野狭窄・視野変状ゴールドマン視野計、自動視野計
調節機能障害・眼球運動障害ピント調節困難・眼球の動きの異常調節力検査、眼球運動検査
まぶたの障害まぶたの欠損・運動障害・まつげはげ外観・写真、眼瞼挙上テスト

目の後遺障害は、一人の被害者に複数の症状が同時に残ることもあります。その場合は各症状をそれぞれ認定した上で、後遺障害等級の併合のルールが適用されます。

どの等級の組み合わせで最終等級が決まるかは、認定の仕組みを踏まえた対応が必要です。


視力低下(失明含む)の認定等級

等級・号条文(症状)慰謝料
1級1号両眼が失明したもの2,800万円
2級1号1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの2,370万円
2級2号両眼の視力が0.02以下になったもの2,370万円
3級1号1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの1,990万円
4級1号両眼の視力が0.06以下になったもの1,670万円
5級1号1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの1,400万円
6級1号両眼の視力が0.1以下になったもの1,180万円
7級1号1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの1,000万円
8級1号1眼が失明し、又は1眼の視力が0.02以下になったもの830万円
9級1号両眼の視力が0.6以下になったもの690万円
9級2号1眼の視力が0.06以下になったもの690万円
10級1号1眼の視力が0.1以下になったもの550万円
13級1号1眼の視力が0.6以下になったもの180万円

視力は矯正視力(眼鏡・コンタクトレンズで矯正した状態)で測定されます。

視力検査の結果が認定の判断材料となります。

視力障害の認定でよく争われるポイント

視力障害の認定において保険会社が争いやすいポイントは、主に次の2点です。

  • 事故との因果関係:事故前から視力が低下していた可能性を指摘して、事故による低下分を否定しようとするケースがあります。事故直後の眼科受診記録・事故前の検診記録があれば有利な証拠になります。
  • 検査結果の信頼性:検査ごとに視力値が大きくばらつく場合、「信頼性が低い」として認定を争われることがあります。複数回の測定結果を一貫して揃えることが重要です。

眼科専門医による丁寧な検査と、受診のたびに測定記録を積み重ねておくことが、後遺障害申請の準備として最も大切です。


複視・視野狭窄の認定等級

等級・号条文(症状)慰謝料
9級3号両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの690万円
10級2号正面を見た場合に複視の症状を残すもの550万円
13級2号正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの180万円
13級3号1眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの180万円

複視(物が二重に見える症状)は正面を見たときに発生するか否かで等級が大きく分かれます。正面複視は10級2号、正面以外の複視は13級2号となります。

複視の立証|ヘスチャートが重要

複視の認定では、ヘスチャート(Hess chart)による眼球運動の客観的評価が立証の核心となります。ヘスチャートは、両眼の眼球運動のずれをグラフ化する検査で、複視がどの視線方向で生じているかを客観的に記録できるものになります。

複視で争われやすいポイントは「症状の恒久性」です。受傷直後の急性期には複視が出ていても、時間が経過することで軽快するケースもあります。後遺障害の認定にあたっては、症状固定時点でも複視が持続していることを継続的な受診記録で示すことが重要です。

視野障害の立証|ゴールドマン視野計が基準

視野狭窄・半盲症の認定では、ゴールドマン視野計による検査結果が判断の基準とされています。

ゴールドマン視野計は動的視野測定に優れた装置で、視野の欠損範囲を等感度曲線として記録し、認定機関が参照できる形式で提出することが求められます。

自動視野計(ハンフリー視野計等)での測定結果もあわせて提出することで、より客観的な立証が可能になります。視野検査は検者への協力が必要な検査のため、複数回の測定で一貫した結果が出ていることが信頼性の担保になります。


調節機能障害・運動障害・まぶたの認定等級

等級・号条文(症状)慰謝料
9級4号両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの690万円
11級1号両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの420万円
11級2号両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの420万円
11級3号1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの420万円
12級1号1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの290万円
12級2号1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの290万円
13級4号両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの180万円
14級1号1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの110万円

調節機能障害・眼球運動障害の解説

調節機能障害とは、遠近のピントを合わせる毛様体筋の機能が低下し、手元や遠方にピントを合わせづらくなる状態です。交通事故による頭部外傷・眼球打撲・頸部損傷に伴って生じることがあります。認定では調節力検査(近点測定など)による客観的な記録が必要です。

眼球運動障害とは、外眼筋の損傷や神経麻痺により眼球の可動域が制限される状態です。外転神経(第6脳神経)・動眼神経(第3脳神経)・滑車神経(第4脳神経)のいずれかが傷ついた場合に生じやすく、複視と合併することも少なくありません。「著しい」かどうかの判断が等級認定の核心で、眼球の運動方向・角度を客観的に記録した検査結果が立証の柱になります。

まぶたの障害の解説

まぶたの後遺障害は、欠損(組織が失われた状態)運動障害(まぶたの開閉の動きが制限される状態)に分かれます。欠損については外観・写真・実測記録が認定の判断材料となります。運動障害については、まぶたをどれだけ開閉できるかを計測した記録(眼瞼挙上幅など)が重要です。

「著しい欠損」「著しい運動障害」の解釈は認定実務でも争われやすい部分です。主治医の所見だけでなく、必要に応じて専門医による意見書を取得することが、等級の確保につながることがあります。


保険会社に争われやすいポイントと被害者側の対策

目の後遺障害では、保険会社側からいくつかの典型的な争い方がされます。事前に把握して準備しておくことが大切です。

  • 事故との因果関係の否定:「事故前から視力・視野に問題があったのではないか」という指摘。事故直後の早期受診記録と、事故前の健診・眼科受診履歴を対比できると反論しやすくなります。
  • 検査結果の信頼性への疑義:視力・視野・複視のいずれも、被検者の協力が必要な検査です。検査ごとの値に大きなばらつきがあると「信頼性が低い」と評価されるリスクがあります。同一条件での反復測定記録が重要です。
  • 症状の固定性への疑問:急性期に見られた症状が回復している可能性を指摘され、症状固定時点での残存症状を否定しようとするケースがあります。症状固定診断書の記載内容と、その前後の通院記録が一致していることが大切です。
  • 等級の低評価:両眼・1眼の区別や「著しい」の解釈を保険会社に有利に判断されるケースがあります。認定結果に納得できない場合は異議申立てが可能です。

弁護士費用特約と弁護士依頼のメリット

目の後遺障害は等級の幅が広く(1級〜14級)、認定される等級によって慰謝料・逸失利益の差が非常に大きくなります。そのため、適切な等級を確保するための医証の収集と、認定後の交渉の両面で弁護士のサポートが有効です。弁護士費用特約を使えば、弁護士費用を自分の保険会社が負担してくれます。

  • 自動車保険に付帯していることが多い
  • 上限額は一般的に300万円
  • 特約を使っても、一般的には保険の等級は下がらないとされています(保険会社により取扱いが異なる場合があるため、ご加入の保険会社にご確認ください)
  • 家族の保険に付いている特約が使えるケースもあります

よくある質問(FAQ)

視力の測定は矯正視力ですか、裸眼視力ですか?

後遺障害認定では矯正視力(眼鏡・コンタクトレンズで矯正した状態)が判断材料となります。眼科専門医による視力検査の結果を保険会社・認定機関に提出することで認定の判断が行われます。

正面複視と正面以外の複視は、何が違うのですか?

正面を見たときに物が二重に見える状態が「正面複視」(10級2号)、正面以外の方向を見たときに二重に見える状態が「正面以外の複視」(13級2号)です。日常生活への影響度から、正面複視の方が重い等級として認定されます。立証にはヘスチャートによる眼球運動の客観的な記録が重要です。

視野狭窄や半盲症は何級が認定されますか?

両眼に半盲症・視野狭窄・視野変状が残った場合は9級3号、1眼のみの場合は13級3号が認定されます。視野計検査(ゴールドマン視野計等)による客観的な評価が認定の判断材料となります。複数回の一貫した測定記録があると信頼性の評価が高まります。

複数の症状(視力低下+複視など)が同時に残った場合、等級はどうなりますか?

各症状をそれぞれ個別に認定した上で、後遺障害等級の「併合」のルールが適用されます。一般的に、重い等級を基準として一定の繰り上げが行われる仕組みです。どの症状をどの順番で認定申請するか、併合後の等級がどうなるかは、専門的な判断が必要なため弁護士へのご相談をおすすめします。

認定結果に納得できない場合、異議申立てはできますか?

できます。後遺障害等級の認定結果に異議がある場合は、自賠責保険に対して異議申立てを行うことができます。目の後遺障害で異議申立てが認められるケースでは、追加の眼科専門医による検査・意見書の提出や、過去の検査記録の再整理が決め手になることが多いです。異議申立ての内容と証拠の組み立て方については、弁護士に相談することをおすすめします。

調節機能障害や眼球運動障害は、どんな検査が必要ですか?

調節機能障害の立証には、調節力を客観的に計測した検査(近点測定等)の記録が必要です。眼球運動障害については、眼球の可動域・運動方向・制限の程度を記録した検査結果と、必要に応じてヘスチャートが用いられます。「著しい」かどうかの判断基準が等級認定の核心となるため、眼科専門医による詳細な所見書・意見書を取得しておくことが重要です。

まとめ|目の後遺障害の等級と慰謝料

障害区分認定等級の範囲慰謝料の幅(弁護士基準)主な立証検査
視力障害(両眼・1眼)1級〜13級180万円〜2,800万円矯正視力検査
複視(正面・正面以外)10級・13級180万円〜550万円ヘスチャート・複視検査
視野障害(両眼・1眼)9級・13級180万円〜690万円ゴールドマン視野計
調節機能・眼球運動障害11級・12級290万円〜420万円調節力検査・眼球運動検査
まぶたの障害9級〜14級110万円〜690万円外観・写真・眼瞼挙上測定

「自分の症状は何級になるのか相談したい」という方へ

目の後遺障害は症状の種類・範囲・検査結果によって等級が大きく変わります。検査結果の揃え方・認定申請の組み立て・認定後の交渉まで、専門的な対応が認定結果と賠償額に直結する分野です。

弁護士 小林聖詞は、交通事故で多数の解決実績があります。解決実績はこちら

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この記事を書いた人

弁護士/心理カウンセラー/夫婦カウンセラー

法律と心、両方の視点から問題に向き合い、「本当に納得できる解決」を大切にしています。
男女問題・借金問題・交通事故など、心の負担が大きいトラブルや人間関係のお悩みに強みがあります。法律実務歴10年以上。安心してご相談ください。

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