口の後遺障害|咀嚼・言語機能障害と歯科補綴の認定等級と慰謝料を解説

交通事故で咀嚼・言語の機能障害が残った、または歯を多数失った──。「咀嚼障害は何級?」「歯科補綴は何本以上で認定される?」「将来の治療費や逸失利益はどうなる?」──こんな疑問を抱えていらっしゃる方は多いのではないでしょうか。

口の後遺障害は、咀嚼・言語機能の障害と歯科補綴の本数によって、別表第二の1級〜14級の幅広い等級が認定されますが、その過程では「等級認定の要件」「機能障害としてみるか歯牙障害としてみるか」「逸失利益の扱い」「将来の補綴交換費用」といった複数の論点が同時に問題となります。

この記事では、元保険会社側代理人弁護士として保険会社の評価実務を内側から知る弁護士が、口の後遺障害認定の仕組みと、実務で争点となりやすい典型ポイントを解説します。

目次

咀嚼・言語機能障害の認定等級

等級・号条文(症状)慰謝料
1級2号咀嚼及び言語の機能を廃したもの2,800万円
3級2号咀嚼又は言語の機能を廃したもの1,990万円
4級2号咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの1,670万円
6級2号咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの1,180万円
9級6号咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの690万円
10級3号咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの550万円

咀嚼障害は「流動食しか食べられない」(廃止)・「固形物でも一部のみ食べられない」(著しい障害)・「やや固いものを食べにくい」(障害)など、食事制限の程度で判定されます。

言語障害は「4種の語音(口唇音・歯舌音・口蓋音・喉頭音)のうち何種類を発音できないか」で判定され、顎骨骨折や顎関節円板の偏位などの画像所見と、実際の発音テスト結果を総合して判断されます。

ここでのポイントは、「歯を多く失っているからといって、必ずしも咀嚼・言語機能障害として上位等級が付くわけではない」という点です。

顎骨骨折や咬合不全などにより、流動食しか摂れない、特定の語音が発音できないといった機能面の障害がどこまで残っているかを、診断書・画像検査・摂食状況の記録などで具体的に立証できるかが、上位等級認定のカギになります。


歯科補綴の認定等級(本数別)

歯科補綴を加えた歯の本数等級・号慰謝料
14歯以上10級4号550万円
10歯以上11級4号420万円
7歯以上12級3号290万円
5歯以上13級5号180万円
3歯以上14級2号110万円

「歯科補綴」とは、失った歯や欠損部分を補うために行う治療(インプラント・ブリッジ・差し歯・入れ歯など)を指します。歯1本ごとに本数がカウントされ、本数に応じて等級が認定されます。

もっとも、対象となるのは「現実に喪失(抜歯を含む)した歯」または「歯冠部の体積の4分の3以上を欠損した歯」であり、単に少し欠けただけ・表面を削って詰め物をしただけの歯は原則としてカウントされないことに注意が必要です。

逸失利益の扱い

歯科補綴により見かけ上の咬合や審美性が回復している場合、保険会社は「機能は補綴で回復する」「仕事には影響しない」として、歯牙障害について労働能力喪失率をゼロとして、逸失利益を否定しようとする傾向があります。

特に、10級4号〜14級2号の歯科補綴等級のみが認定され、咀嚼・言語機能障害の等級が併発していないケースでは、逸失利益は認められない、という主張がされることが多いです。

しかしながら、実際には、インプラントやブリッジの違和感・疼痛により長時間の就労が困難なケースや、咀嚼機能の低下から体調に異変を来しているケースなど、仕事に影響がでる場合もあるかと思います。もちろん、接客業・営業職・芸能人など、容貌や発声が重要な職種であれば、なおさらです。

そのため、保険会社に対して、事故前の仕事内容がどのようなもので、歯科補綴によりどのような影響が生じたか、ということを具体的に説明・反論することになります。仮に、逸失利益自体が認められなかったとしても、その分、慰謝料を増額するなどの調整が図られることもあります。

したがって、単に等級表だけを見るのではなく、「職種・年齢・具体的な仕事上の支障」を踏まえて、逸失利益や慰謝料をどう構成するか、というのが、歯科補綴の後遺障害等級において重要なポイントになります。


よくある質問(FAQ)

「咀嚼及び言語」と「咀嚼又は言語」の違いは?

「咀嚼及び言語」は両方の機能に障害がある状態、「咀嚼又は言語」はどちらか一方に障害がある状態を指します。

両方に障害がある方が等級は上になり(例:「廃した」場合、両方なら1級2号、一方なら3級2号)、診断書でも「咀嚼・言語のいずれにどの程度の障害が残っているか」を明確に分けて記載してもらうことが重要です。

歯科補綴は事故前から虫歯だった歯も対象になりますか?

事故によって歯を失った場合や歯の損傷が生じた場合の補綴のみが対象であり、事故前から虫歯・歯周病等で補綴していた歯は、原則として後遺障害のカウント対象外となります。

自賠責では、既存の補綴歯を一度本数に算入したうえで「既存障害」として控除する取り扱いがされています。事故と補綴の因果関係を診断書・治療経過で丁寧に示すことが重要です。

歯が欠けただけでは認定されませんか?

歯科補綴の対象となるのは、原則として「歯冠部の体積の4分の3以上を欠損した歯(または喪失した歯)に補綴を加えた」場合であり、軽微な欠損で補綴が不要な場合は後遺障害の対象外となる可能性があります。

まとめ|口の後遺障害は早期に弁護士へ相談を

口の後遺障害は、咀嚼・言語機能障害(1級〜10級)と歯科補綴(10級〜14級)で幅広い等級が認定されるうえ、等級認定の要件や、認定されたとしても逸失利益で争いが生じるなど、複雑な問題が生じます。

歯科補綴の本数や機能障害の程度の正確な評価にくわえ、仕事への影響や将来の治療費まで見据えた主張立証が重要になりますので、早期の段階から交通事故に詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。

弁護士費用特約があれば、原則として自己負担なしでご依頼いただけます。弁護士 小林聖詞は、交通事故で多数の解決実績があります。解決実績はこちら初回相談は無料です。

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この記事を書いた人

弁護士/心理カウンセラー/夫婦カウンセラー

法律と心、両方の視点から問題に向き合い、「本当に納得できる解決」を大切にしています。
男女問題・借金問題・交通事故など、心の負担が大きいトラブルや人間関係のお悩みに強みがあります。法律実務歴10年以上。安心してご相談ください。

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