駐車場内の事故の過失割合|「5対5」とは限らない事故の形ごとの基準

ご相談者様の中には、商業施設やコインパーキングなどの駐車場の中で車同士の事故に遭ってしまい、相手方の保険会社から「駐車場の中の事故で、どちらも動いていたので、過失割合は5対5です」と言われてしまった方や、こちらはゆっくり通路を進んでいただけなのに、相手と同じだけの責任を負わなければならないのかと、納得できないまま示談の話を進められてしまっている、という方がいらっしゃいます。
駐車場の中の事故であっても、過失割合は「駐車場だから5対5」と一律に決まっているわけではありません。交通事故の過失割合を判断するときに裁判所や保険会社が参照している基準には、駐車場の中の事故についての類型があり、通路どうしの出合い頭の事故なのか、駐車区画から出る車と通路を進む車の事故なのか、駐車区画に入ろうとする車と通路を進む車の事故なのか、といった事故の形ごとに、基本となる割合が分けて定められています。
以下、駐車場の事故の形ごとの基本の過失割合と、割合が修正される主な事情、止まっていた車にぶつけられた場合の考え方、そして映像の記録の大切さについてお話しします。
駐車場の事故にも、事故の形ごとに過失割合の基準があります
交通事故の過失割合は、多くの場合、東京地裁の裁判官らがまとめた「別冊判例タイムズ39号 民事訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂6版)」(以下「判タの基準」といいます)をもとに判断されています。判タの基準には「駐車場内の事故」という章があり、大型の商業施設の駐車場のように、多くの車が止められる駐車場での事故を想定して、四輪車同士の事故と、歩行者と四輪車の事故の基準が定められています。
駐車場の通路は、道路交通法上の「道路」にあたるかどうかが問題になることがありますが、判タの基準は、通路が「道路」にあたるかどうかにかかわらず、駐車場の中の事故には原則としてこの基準を用いるという考え方をとっています。駐車場では、車が後退したり向きを変えたりすることが多く、止まっている車から人が出てくることも多いため、走っている車には、前をよく見ることや、すぐに止まれる速度で進むことが、一般の道路よりも強く求められるという考え方が前提になっています。
四輪車同士の事故の基本の過失割合は、次のとおりです。いずれも、車が前進していたか後退していたかを問わずに用いられる基準です。
| 事故の形 | 基本の過失割合 |
|---|---|
| 通路の交差する部分での出合い頭 | 50:50 |
| 通路を進む車と、駐車区画から通路に出る車 | 通路の車30:出る車70 |
| 駐車区画から通路に出る車どうし | 50:50 |
| 通路を進む車と、通路から駐車区画に入る車 | 通路の車80:入る車20 |
| 通路から駐車区画に入る車どうし | 50:50 |
| 駐車区画に入る車と、駐車区画から出る車 | 入る車20:出る車80 |
このように、「どちらも動いていたので5対5」となるのは一部の事故の形に限られ、事故の形によっては、一方の車の過失が大きく重くなります。また、50対50とされている事故の形であっても、それはあくまで出発点であり、通路の幅や標示、運転の仕方によって修正されることになります。
通路どうしの出合い頭の事故は、5対5が出発点で、通路の幅や一時停止の標示によって修正されます
駐車場の通路が交差している部分で、直進や右折・左折をしようとした車同士が出合い頭にぶつかってしまった場合には、判タの基準では、基本の過失割合は50対50とされています。駐車場の通路では、駐車区画に出入りする車がさまざまな動きをするため、交差する部分に入る車は、どちらも相手の車の動きを予想して安全を確かめる義務を負う、という考え方によるものです。
もっとも、この50対50は、そのまま結論になるものではありません。判タの基準では、次のような事情があると、割合が修正されるとされています。
- 一方の通路が狭く、他方の通路が明らかに広い場合は、狭い通路から入った車に10%を加算します
- 丁字路のような形の交差部分で、相手が突き当たりの通路を直進していた場合も、10%が加算されます
- 一時停止や通行方向(順路)の標示に違反した車には、15〜20%を加算します
- 著しい過失があった車には10%、重過失があった車には20%を加算します
著しい過失の例として、判タの基準は、一方の車が明らかに先に交差部分に入っていたのに、他方の車が交差部分の手前で減速しなかった場合を挙げています。そのため、通路どうしの出合い頭の事故であっても、どちらが先に交差部分に入っていたのか、相手の車が減速していたのか、相手が順路の矢印に反して進んでいなかったか、といった事情によって、5対5から割合が動くことになります。
駐車区画から通路に出る車と、通路を進む車の事故では、出る車の過失が重く、基本は30対70です
駐車場の通路を進んでいたところ、駐車区画から急に出てきた車にぶつけられてしまった、というご相談は少なくありません。この形の事故について、判タの基準は、通路を進む車の過失を30%、駐車区画から出る車の過失を70%としています。
駐車区画から出る車は、通路に出る前には駐車区画の中で止まっているので、通路を進む車よりも容易に安全を確かめることができ、通路を進む車の進行を妨げるおそれがある場合には、通路に出ることを控える義務を負うと考えられているためです。一方で、通路を進む車にも、駐車している車が出てくることを予想して、ぶつからないように進む義務があるため、過失がゼロにはなりません。バックで出てきた車でも、前進で出てきた車でも、この基準の考え方は変わりません。
この割合は、次のような事情で修正されます。
- 出る車に著しい過失があれば10%、重過失があれば20%、通路の車の過失が減ります
- 通路の車が、著しい前方の不注意や、他の車の通常の速度を明らかに上回る速度で進んでいた場合、また標識や路面の標示で示された順路に反して進んでいた場合には、著しい過失として10%(重過失であれば20%)が加算されます
また、判タの基準は、通路を進む車が急ブレーキをかけても止まれない距離まで近づいてから、駐車区画の車が出てきた場合や、通路の車が出てくる車に気づいて手前で止まっていたところにぶつけられた場合には、この基準によらず、個別の事情に即して判断するとしています。
駐車区画に入ろうとする車と、通路を進む車の事故では、通路を進む車の過失が重く、基本は80対20です
駐車区画に入るためにハザードランプを点けてバックを始めたところ、後ろから通路を進んできた車にぶつけられてしまった、という事故もあります。この形の事故について、判タの基準は、通路を進む車の過失を80%、駐車区画に入ろうとする車の過失を20%としています。
駐車場は車を止めるための施設であり、駐車区画に入ることは駐車場の目的に沿った動きですので、原則として通路を進む車よりも優先され、通路を進む車は、駐車区画に入ろうとする車が収まるまで止まって待つか、安全にすれ違える距離をとって進む義務を負う、と考えられているためです。
ただし、この基準は、ハザードランプや方向指示器、後退灯の点灯、車の向きなどによって、駐車区画に入ろうとしていることが、その区画の手前の位置で客観的に分かる状態になっていたことが前提です。車同士の距離が近づいた地点で急に入る動きを始めた場合や、駐車区画の前を通り過ぎてから急にバックを始めた場合などには、この基準によらず、個別の事情に即して判断されます。また、いったん駐車区画に収まった車が、止める位置を直すために再び通路に出てぶつかった場合には、駐車区画から出る車の基準を参考にして判断するとされています。
修正の事情としては、通路を進む車が徐行していなかった場合に10%、著しい過失に10%、重過失に20%が、通路の車に加算されます。反対に、駐車区画に入る車が、切り返しの際にぶつかるまで相手の車に気づいていなかった場合や、急発進をした場合などは、著しい過失として通路の車の過失が10%減ります。
駐車区画から出る車どうし、入る車どうしは50対50、入る車と出る車は20対80です
駐車区画から通路に出ようとした車どうしがぶつかってしまった場合と、通路から同じ区画や隣の区画に入ろうとした車どうしがぶつかってしまった場合には、判タの基準は、基本の過失割合をそれぞれ50対50としています。ただし、いずれも、双方の動き出しがほぼ同時であったことが前提で、一方がすでに出ている途中や入っている途中であったのに、他方が後から動き出してぶつかった場合には、この基準によらず、個別に判断すべきとされています。
駐車区画に入ろうとする車と、駐車区画から出ようとする車がぶつかってしまった場合には、入る車の過失を20%、出る車の過失を80%としています。入る動きが優先され、出る車は駐車区画の中で止まっている段階で安全を確かめやすいという考え方によるもので、通路をはさんで向かい合う区画から出る車と、反対側の区画に入る車の事故にも用いられます。
止まっていた車にぶつけられた場合は、これらの基準の前提にあたりません
ここまでの基準は、いずれも、双方の車が動いていて、双方に注意の義務の違反があったことを前提にしています。そのため、駐車区画に止めて車の中にいたところにぶつけられてしまった場合や、通路で相手の車が出てくるのに気づいて手前で止まって待っていたところにぶつけられてしまった場合には、そもそもこれらの基準の前提にあたらず、止まっていた側にどのような過失があったのかを個別に判断することになります。
保険会社から「駐車場の事故なので双方に過失がある」と言われてしまった場合でも、ぶつかった時点でこちらの車が止まっていたのであれば、その事実をどのように示すことができるかが、過失割合を考えるうえで最も大きな点になります。
歩行者と車の事故では、歩行者の基本の過失は10%とされています
駐車場の中で歩いていたところを車にぶつけられてしまった場合についても、判タの基準があります。駐車区画の中での事故と、通路での事故のいずれも、歩行者の基本の過失は10%とされています。
駐車区画の中の事故では、隣の区画で車の乗り降りをしていた場合には歩行者の過失が10%減り、通路での事故では、歩行者用の通路の標示の上を歩いていた場合に20%減る一方、急に飛び出した場合には10%加算されます。また、歩行者が児童や高齢者の場合には5%、幼児や身体に障害のある方などの場合には10%、歩行者の過失が減るとされています。
「駐車場だから5対5」と言われたときは、事故の形と映像を確認したうえで交渉します
当事務所でも、相手方の保険会社から「駐車場の事故なので5対5です」と言われ、通路での出合い頭の事故などについて、事故の形と判タの基準をもとに争った例がございます。保険会社が示談の段階で示す過失割合は、あくまで保険会社としての提案であり、そのまま受け入れなければならないものではありません。
弁護士小林は、かつて保険会社の代理人として加害者側を担当しておりました。その経験も踏まえて、ご依頼をいただいた場合には、まず事故がどの形にあたるのかを整理し、そのうえで、どちらが先に交差部分に入っていたか、相手の車が徐行していたか、ハザードランプを点けていたか、順路の矢印に反していなかったか、といった修正の事情を一つずつ確認して、保険会社に示すことになります。
そのときに大きな意味を持つのが、ドライブレコーダーの映像と、駐車場の防犯カメラの映像です。駐車場の事故では、どちらが先に動いたのか、相手が止まっていたのか、ハザードランプが点いていたのかといった、数秒の間のことが過失割合を分けることになりますが、当事者のお話だけでは食い違ってしまうことが多く、映像があれば、その食い違いを客観的に確かめることができます。
ドライブレコーダーの映像は、時間がたつと上書きされてしまうことがありますので、事故のあとは早めに保存しておいていただくと安心です。保存の方法につきましては、ドライブレコーダーの映像が上書きされそうなときの保存方法に記載しております。また、駐車場の防犯カメラの映像は、駐車場や施設の管理者が管理しており、保存される期間が限られていることもありますので、事故のあと早い段階で、管理者に映像の保存をお願いしておくことをおすすめします。
保険会社の対応に納得できない場面につきましては、保険会社の対応に納得できないときもあわせてご覧ください。
よくあるご質問
駐車場の中の事故であっても、過失割合は「駐車場だから5対5」と決まっているものではなく、通路どうしの出合い頭なのか、駐車区画から出る車や入る車との事故なのかによって基本の割合が異なり、さらに徐行の有無や順路の標示、どちらが先に動いていたかといった事情で修正されます。保険会社から示された割合に納得ができない場合には、事故の形と映像を確かめたうえで、交渉の余地があるかどうかを検討することができます。
事故の状況と、ドライブレコーダーなどの映像があればお手元にご用意いただいたうえで、示談に応じる前に、一度状況をお聞かせください。交通事故のご相談は、お住まいの地域にかかわらずお受けしております。初回のご相談は無料です。








