後遺障害9級|慰謝料690万円・全17号の症状一覧と逸失利益を解説

保険会社から後遺障害9級が認定されたと連絡を受けたものの、「号数が17号まであって、自分の症状がどれに当たるか分からない」「慰謝料はいくらもらえるんだろう」「神経系統の障害で9級が出たが、逸失利益はちゃんと請求できるの?」──こんな疑問を抱えていらっしゃる方は多いのではないでしょうか。

後遺障害9級の慰謝料は、自賠責基準では249万円とされ、弁護士基準では690万円とされています。両者には約2.8倍の差があり、これに労働能力喪失率35%による逸失利益が加算されることで、総額数千万円規模になることも見られます。

この記事では、元保険会社側代理人弁護士として保険会社の評価実務を内側から知る弁護士が、9級1号〜17号の認定基準・慰謝料の3基準比較・逸失利益の計算方法を、ご相談者目線で解説します。

目次

後遺障害9級とは|中等度の後遺障害

後遺障害等級は、自動車損害賠償保障法施行令の別表第二(介護を要しない後遺障害)で1級から14級まで定められています。9級はその中で中等度に位置する等級です。9級は号数が1号から17号までと別表第二の中で最も多く、視覚・聴覚・鼻・口・神経系統・胸腹部臓器・手指足指・醜状・生殖器など幅広い分野をカバーしています。


後遺障害9級の症状一覧|1号〜17号の認定基準

別表第二の9級は1号から17号まであります。号数が多いため、号数と症状の対応を間違えやすい等級です。ご自身がどの号で認定されたかを正確に確認することが、慰謝料・逸失利益の見通しを立てる第一歩となります。

号数認定基準(条文)
9級1号両眼の視力が0.6以下になったもの
9級2号1眼の視力が0.06以下になったもの
9級3号両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
9級4号両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
9級5号鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
9級6号咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
9級7号両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
9級8号1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
9級9号1耳の聴力を全く失ったもの
9級10号神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
9級11号胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
9級12号1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの
9級13号1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの
9級14号1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの
9級15号1足の足指の全部の用を廃したもの
9級16号外貌に相当程度の醜状を残すもの
9級17号生殖器に著しい障害を残すもの

このうち、神経系統の機能又は精神に障害を残すケースは9級10号です。高次脳機能障害や脊髄損傷で「労務が相当な程度に制限される」と評価された場合に認定されます。手指の喪失は9級12号、手指の用廃は9級13号と、号数によって対象が明確に分かれています。


後遺障害9級の慰謝料|弁護士基準690万円と自賠責基準249万円の差

後遺障害9級の慰謝料は、使用する基準によって金額が大きく異なります。自賠責基準249万円と弁護士基準690万円の差は約2.8倍です。

基準後遺障害慰謝料(9級)特徴
自賠責基準249万円法律で定められた最低限の補償
任意保険基準300万円程度(各社非公開)保険会社が示談提示で使う社内基準
弁護士(裁判)基準690万円裁判所が採用する基準(「赤い本」記載)

なお、自賠責保険からの9級の支払い上限は616万円です。これは後遺障害慰謝料249万円と逸失利益を合算した枠内の上限額です。


後遺障害9級の逸失利益|労働能力喪失率35%・原則67歳までの計算

後遺障害が認定されると、慰謝料とは別に「逸失利益」が請求できます。計算式は以下の通りです。

逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × ライプニッツ係数

労働能力喪失率は等級ごとに定められており、後遺障害9級は35%です。労働能力喪失期間は、原則として「症状固定時から67歳まで」とされます。9級は1〜17号いずれも原則通り67歳までで計算されるのが一般的です。

9級10号(神経系統)の留保

9級10号(神経系統の機能又は精神に障害)の場合、原則として67歳までで計算されますが、症状の重さや将来の改善可能性によっては期間が制限される場合もあります。むちうちによる神経症状(14級9号原則5年・12級13号原則10年)と異なり、9級10号は重度の神経障害として原則67歳までが基本となりますが、個別事案で減額が主張されることがある点には留意が必要です。

計算例|年収500万円のケース

症状固定時の年齢就労可能年数計算式逸失利益
30歳37年500万円 × 35% × 22.1672約3,879万円
40歳27年500万円 × 35% × 18.3270約3,207万円
50歳17年500万円 × 35% × 13.1661約2,304万円

同じ9級でも、症状固定時の年齢によって逸失利益は大きく変わります。9級は喪失率が35%と中程度に高いため、年収と就労可能年数によっては逸失利益だけで数千万円に達するケースも見られます。


9級10号(神経系統・精神)が認定されるケース

9級10号「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」は、高次脳機能障害や脊髄損傷で中等度の症状が残ったケースで認定されます。

  • 高次脳機能障害(記憶力低下・注意力散漫・遂行機能障害など)で、就労に明らかな支障があるケース
  • 脊髄損傷で軽度の運動・感覚障害が残ったケース
  • 神経心理学的検査・画像所見・日常生活の支障の客観的記録などが認定の判断材料

9級10号と隣接する等級は、上が7級4号「軽易な労務以外の労務に服することができないもの」、下が12級13号「局部に頑固な神経症状」(むちうちが典型)です。症状の重さで段階的に等級が分かれます。


9級と10級・8級の違い

等級慰謝料(弁護士基準)労働能力喪失率典型的な症状
10級550万円27%視力0.1以下・複視・関節機能著しい障害・下肢短縮3cm以上など
9級690万円35%神経系統「労務が相当な程度に制限」・両眼視力0.6以下・聴力全失(1耳)など
8級830万円45%1眼失明・脊柱運動障害・関節用廃・偽関節など

視力で例えると、両眼0.6以下で9級1号、両眼0.1以下で6級1号、両眼0.02以下で2級2号と、視力低下の度合いで等級が階段状に変わります。手指喪失でも、おや指1本失うと9級12号、おや指含む3本以上失うと7級6号と、本数で等級が変わります。


9級認定のために被害者ができること

  • 症状に応じた専門医の検査:神経系統は脳神経外科・神経内科、視力は眼科、聴力は耳鼻科、手指は形成外科や整形外科など、適切な専門医の検査結果を残す
  • 高次脳機能障害は神経心理学的検査が必須:WAIS-IV・WMS-Rなどの検査で記憶力・注意力・遂行機能を客観的に評価する
  • 日常生活の支障を客観的に記録:家族の陳述書・職場の評価書なども認定の参考資料となる
  • 後遺障害診断書の記載は弁護士と確認:認定基準に沿った記載になっているか確認する
  • 9級と10級・8級の境界を意識:症状の重さで等級が変わるため、客観的な検査結果が決め手となる

9級が非該当・10級にとどまった場合の異議申立て

後遺障害申請の結果が「非該当」だった場合や、「10級にとどまった」場合でも、異議申立てが可能です。新たな医証(追加の神経心理学的検査・画像所見・医師の意見書など)を添えて再審査を求めることで、9級への等級変更が認められるケースもあります。


弁護士費用特約と弁護士依頼のメリット

「弁護士に頼むとお金がかかるのでは」と心配される方は多いですが、弁護士費用特約を使えば弁護士費用を自分の保険会社が負担してくれます。後遺障害9級は中等度の等級で賠償総額が大きいため、弁護士基準で交渉することで増額幅も大きく、弁護士費用を差し引いても手取りが増えるケースが多く見られます。

  • 自動車保険に付帯していることが多い
  • 上限額は一般的に300万円
  • 特約を使っても、一般的には保険の等級は下がらないとされています(保険会社により取扱いが異なる場合があるため、ご加入の保険会社にご確認ください)
  • 家族の保険に付いている特約が使えるケースもあります

よくある質問(FAQ)

後遺障害9級の慰謝料は実際いくらもらえますか?

弁護士基準では後遺障害慰謝料が690万円とされています。これに労働能力喪失率35%による逸失利益が加算されるため、年収や年齢によっては総額数千万円規模になるケースも見られます。9級は1〜17号いずれも原則として症状固定時から67歳までを労働能力喪失期間として計算されます。

9級10号と9級13号の違いは何ですか?

9級10号は「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」(高次脳機能障害・脊髄損傷など)、9級13号は「1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの」(手指の機能廃止)です。号数の取り違えに注意が必要です。

高次脳機能障害で9級10号を取るには何が必要ですか?

WAIS-IVやWMS-Rなどの神経心理学的検査による記憶力・注意力・遂行機能の客観的評価、画像所見(CT・MRIで脳萎縮等の確認)、日常生活や就労での支障の客観的記録(家族の陳述書・職場の評価書など)が認定の判断材料となります。事故後できるだけ早い段階で専門医の検査を受けることをおすすめします。

9級と10級では、何が違うのですか?

慰謝料は弁護士基準で9級690万円・10級550万円、労働能力喪失率は9級35%・10級27%という差があります。視力で例えると両眼0.6以下で9級1号、1眼0.1以下で10級1号と、症状の重さで等級が分かれます。神経系統の障害も9級10号「労務が相当な程度に制限」、10級にはなく7級4号「軽易な労務以外不能」と症状の重さで階段状に等級が変わります。

後遺障害等級の認定に納得ができません。9級への異議申立てはできますか?

異議申立てが可能です。新たな医証(追加の神経心理学的検査・画像所見・医師の意見書など)を添えて再審査を求めることで、9級への等級変更が認められるケースもあります。1度の認定結果で諦めずに弁護士にご相談ください。

9級の弁護士費用はどのくらいかかりますか?

弁護士費用特約があれば原則として自己負担なしでご依頼いただけます。特約がなくても、後遺障害9級は中等度の等級で賠償総額が大きく、弁護士費用を差し引いても手取りが増えるケースが多く見られます。まずは無料相談をご利用ください。

まとめ|後遺障害9級は早期に弁護士へ相談を

項目内容
後遺障害慰謝料(自賠責基準)249万円
後遺障害慰謝料(弁護士基準)690万円
労働能力喪失率35%
労働能力喪失期間(全号)原則67歳まで
主要な症状類型神経系統(9級10号)・両眼視力0.6以下・聴力全失(1耳)・手指喪失(おや指1本)など
逸失利益(年収500万円・30歳の例)約3,879万円

後遺障害9級は中等度の等級ですが、慰謝料690万円+逸失利益で適切に請求すれば総額数千万円規模になるケースも見られます。9級は号数が17号までと多く、症状ごとに対応する号数を正確に把握することが重要です。示談書にサインする前に、一度弁護士に相談することが重要なポイントです。


「自分のケースは相談する価値があるかな…」とお悩みの方へ

ここまでお読みいただいて、こんなお悩みをお持ちではありませんか。

  • 9級認定が出たが、保険会社の慰謝料提示が想像していたより低い
  • 高次脳機能障害で9級10号が認定されたが、逸失利益の計算が複雑で困っている
  • 10級から9級への異議申立てを検討しているが、何を出せばいいか分からない
  • 号数が多くて、自分の症状がどの号に該当するか分からない
  • 示談書にサインを求められているが、判断材料がない

後遺障害9級の交渉は、相手保険会社の出方を見ながら、号数ごとの認定基準や赤い本基準を踏まえて進める専門的な作業です。一人で抱え込まず、一度ご相談いただければ、ご自身のケースで何ができるかが具体的に見えてきます。

ご相談で受けられるサポート

  • 弁護士基準での慰謝料計算(自賠責249万円 → 690万円相当)
  • 逸失利益の正しい計算(症状固定時の年齢を踏まえて)
  • 認定された等級が適正かの診断(より上位等級への変更余地の確認)
  • 10級から9級への異議申立てサポート
  • 保険会社との示談交渉の代行(精神的負担の軽減)

弁護士費用特約があれば、原則として自己負担なしでご依頼いただけます。特約がなくても、増額幅が弁護士費用を上回るケースが多いため、まずは無料相談で具体的な見通しを確認していただくことをおすすめします。

弁護士 小林聖詞は、交通事故で多数の解決実績があります。解決実績はこちら

初回相談は無料です。「自分のケースは相談する価値があるか分からない」という方も、まずはお気軽にお問い合わせください。ご相談の段階で「ご自身で対応したほうがいい」と判断した場合は、その旨を率直にお伝えします。後遺障害9級でお悩みの方は、示談書にサインする前に、まず一度ご相談ください。

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この記事を書いた人

弁護士/心理カウンセラー/夫婦カウンセラー

法律と心、両方の視点から問題に向き合い、「本当に納得できる解決」を大切にしています。
男女問題・借金問題・交通事故など、心の負担が大きいトラブルや人間関係のお悩みに強みがあります。法律実務歴10年以上。安心してご相談ください。

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