個人事業主でも自己破産できる?事業を続けられる場合とやめる場合

ご相談者様の中には、個人で事業をされていて、売上が落ち込んでしまった時期に事業資金や生活費を借入れでまかなううちに返済することができなくなってしまった方や、自己破産をすると今のお仕事もやめなければならなくなるのではないかと心配になって、相談に踏み出せなくなってしまった、という方がいらっしゃいます。
個人事業主の方でも、自己破産をすることはできます。また、自己破産をしたからといって、すべての方が事業をやめなければならないわけではなく、事業の内容によっては、お仕事を続けながら手続を進めることができる場合もあります。以下、個人事業主の方の自己破産の進み方と、事業を続けられるかどうかの分かれ目をお話しします。
なお、借金・債務整理のご相談は、東京23区にお住まいの方、または東京23区にお勤めの方を対象とさせていただいております。
個人事業主の方でも、自己破産をすることはできます
自己破産は、借入れを返済することができない状態にある方が、裁判所に申し立てて、借金の支払いを免除してもらう手続です。会社員の方か個人事業主の方かによって、自己破産ができるかどうかが変わることはありません。
個人事業主の方の場合、事業のための借入れと生活のための借入れが混ざっていることが多く、また、取引先への買掛金や、リース料、税金の滞納など、債務の種類も多くなりがちです。手続では、こうした事業のための債務も含めて、すべての債権者を一覧にしてお伝えいただくことになります。
事業用の機械や車両、パソコンなどをリース契約で使っていらっしゃる場合には、リース会社も債権者になり、多くの場合、リース物件はリース会社に返すことになります。事業を続けたいとお考えの場合には、お仕事に欠かせない物がリース契約になっていないかも、あわせて確認しておく必要があります。
なお、税金や国民健康保険料などは、自己破産をしても支払いが免除されない債務とされています。消費税などの滞納がある場合には、その扱いもあわせて面談でお話しします。
東京地裁では、個人事業主の方は原則として管財事件になります
自己破産の手続には、財産が少なく調査の必要もない場合の「同時廃止」と、裁判所から選ばれた破産管財人という弁護士が財産や借入れの経緯を調べる「管財事件」の二つの進み方があります。
東京地方裁判所では、個人事業主の方の自己破産は、原則として管財事件として扱われています。事業をされている方は、売掛金や在庫、事業用の口座などがあり、財産の状況や事業の収支を調べる必要があるためです。
管財事件になると、弁護士費用とは別に、裁判所に納める引継予納金が必要になり、東京地方裁判所では原則として20万円です。このほかに、官報公告費用などの実費として、およそ2万円がかかります。費用の準備の方法につきましては、自己破産の費用は、全額用意できていなくても依頼できる?に記載しております。
事業を続けられるかどうかは、その事業がマイナスを生み出すかどうかで見ます
事業を続けられるかどうかの見通しをお伝えするとき、当事務所で最も重視しておりますのは、その事業を続けることで、新たにマイナスを生み出してしまうかどうかです。
店舗の賃料がかかる事業や、仕入れや材料費が先に必要になる事業は、売上が入る前に支払いが発生し、売上が落ちたときにはそのまま新たな借入れや未払いにつながってしまいます。こうした事業は、自己破産の手続を進めながら続けることは、基本的に難しいとお考えいただく必要があります。
一方で、維持するための費用がほとんどかからず、身一つでできるお仕事であれば、事業を続けながら手続を進めることができる場合があります。実際に、ご依頼いただいた方の中には、パソコンを使った副業を続けながら自己破産の手続を進められた方がいらっしゃいます。この方の場合も、事業を続けるために賃料や材料費といった維持費用がかからなかったことが、続けることができた理由でした。
事業を続けたいとお考えの場合には、毎月の売上と、事業のためにかかっている費用を、できる範囲で面談の前に整理しておいていただけますと、見通しをお伝えしやすくなります。正確な帳簿がなくても、通帳の入出金から一緒に確認していくことができます。
面談で事業の収支を伺う際には、売上がどのような形で入ってくるか、毎月決まって出ていく費用があるか、仕入れや材料の購入が必要か、事業のために新たな借入れをしなければ回らない状態になっていないか、といった点を確認いたします。売上がある程度あっても、それを上回る費用が毎月出ていってしまう状態であれば、事業を続けることで借入れや未払いが増えてしまうおそれがありますので、事業を続けるかどうかは、この収支の見通しを踏まえてご一緒に考えていくことになります。
事業をやめることになった場合でも、自己破産の手続が終わったあとに、会社に勤めたり、費用のかからない形で改めてお仕事を始めたりすることは妨げられません。
売掛金・在庫・仕事道具は、財産として調べられます
個人事業主の方の自己破産では、事業に関係するものも、ご本人の財産として扱われます。
取引先からまだ支払いを受けていない売掛金は、財産にあたりますので、破産管財人が回収して、債権者への配当にあてることになります。在庫や事業用の設備、車両なども、価値があるものはお金に換える対象になります。
一方で、お仕事に欠かすことのできない道具類など、もともと差し押さえが禁止されている財産は、自己破産をしても手元に残すことができます。どの道具がこれにあたるかは、業種と道具の内容によって変わりますので、面談でお仕事の内容を伺ったうえでお伝えいたします。
また、自己破産の手続が始まった時点より後に、ご本人が働いて得た収入は、手続の対象にはなりません。事業を続けることができる場合には、手続が始まったあとの売上は、生活のために使うことができます。
取引先や許認可への影響も、事前に確認しておきます
取引先に対して買掛金などの支払いが残っている場合、その取引先も債権者になりますので、受任通知や裁判所からの通知が届くことになります。特定の取引先だけに支払いを続けたいとお考えになる方もいらっしゃいますが、債権者を平等に扱わなければならないという破産の手続の考え方から、一部の債権者にだけ支払うことはできません。今後も取引を続けたい相手がいらっしゃる場合には、その伝え方も含めて、事前にご相談いただくことをおすすめします。
また、業種によっては、自己破産の手続が始まることで、事業に必要な許可や登録、資格に影響が出る場合があります。たとえば、宅地建物取引業や警備業のように、法律で一定期間その仕事に就けないと定められているものがあります。こうした制限は、免責が認められて復権すれば解かれますが、その間お仕事ができなくなることもありますので、お仕事の内容は面談で詳しくお聞かせください。自己破産で就けなくなる職種につきましては、自己破産をすると転職先に知られる?にも記載しております。
ご依頼のあとの流れ
ご依頼をいただいたあと、弁護士費用の初回のお支払いのあと(法テラスの立替制度をご利用の場合はご契約の時点)に、債権者に受任通知を送ります。受任通知が届くと、債権者からご本人への督促は止まります。
申立ての準備では、借入れの一覧に加えて、確定申告書の控え、事業用の通帳、売掛金や在庫の状況が分かる資料などをご用意いただくことになります。事業を続ける場合には、手続が始まったあとも、破産管財人から事業の収支について説明を求められることがありますので、売上と経費の記録はつけておいていただく必要があります。
会社の代表者の方は、会社とあわせての破産を検討します
会社を経営されていて、会社の借入れについて代表者の方が連帯保証人になっている場合には、個人事業主の方の自己破産とは進め方が異なり、会社とあわせて破産の申立てをすることを検討する場合が多くなります。会社の状況によって進め方が変わりますので、会社の決算書などをお持ちいただいて、面談でお話しします。
よくあるご質問
個人事業主の方でも自己破産をすることはでき、東京地方裁判所では原則として管財事件になります。事業を続けられるかどうかは、その事業が新たにマイナスを生み出すかどうかが分かれ目で、維持費用のかからないお仕事であれば、続けながら手続を進めることができる場合もあります。
自己破産をすると仕事もやめなければならないと思い込んでしまわれる前に、お仕事の内容と毎月の収支を、一度お聞かせください。
なお、借金・債務整理のご相談は、弁護士会の規程により対面での面談が必要となります。そのため、東京23区にお住まいの方、または東京23区にお勤めの方を対象とさせていただいております。初回のご相談は無料です。








